<社説>騒音で児童欠席 ヘリ着陸帯提供 取り消せ


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 米軍北部訓練場の一部返還の前提条件として政府が建設した東村高江のN4地区のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)で連日にわたって、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが午後10時以降に離着陸を繰り返している。夜間飛行の騒音の影響で、地元の小中学校の児童生徒が眠れずに睡眠不足となり、学校を欠席する事態が起きている。言語道断だ。米軍は直ちに飛行を中止すべきだ。

 東村高江はイタジイなどの森に囲まれた自然豊かな山村地域だ。夜間には虫の鳴き声こそすれ、静寂に包まれる場所のはずだ。
 ところがヘリ着陸帯が新設されたばかりに、オスプレイの夜間飛行が横行し、騒音によって児童生徒の安眠を脅かしている。睡眠不足で翌日の登校ができない事態は、教育を受ける機会を奪う人権侵害ではないか。
 N4地区の着陸帯2カ所は2013年2月と14年7月に完成した。防衛省は当初、新設の着陸帯6カ所全ての完成後に米軍に提供する方針だった。しかし残り4カ所の計画に遅れが生じたことから、15年2月にN4地区の2カ所を先行提供した。
 しかもN4地区は新設予定地の中でも最も高江集落に近い。住民生活に悪影響を及ぼすのは明らかだ。だからこそ東村議会はN4地区の使用禁止を求める決議を15年2月に全会一致で可決した。しかし米軍は決議の翌日に離着陸を強行している。住民無視も甚だしい。
 そもそもN4地区の環境影響評価(アセスメント)ではオスプレイの使用を想定していない。さらにオスプレイ運用の日米合意では午後10時以降の飛行は制限されているはずだ。それなのにオスプレイは6月に入って少なくとも5日連続で午後10時以降の夜間飛行訓練を実施した。なぜ飛行できるのか。合意には「米国の運用上の所要のために必要と考えられるもの」は制限から除外されているからだ。合意などあってないようなものだ。
 高江小中学校で観測されたオスプレイの低周波音も防衛省作成の環境影響評価の「心理的影響」や環境省設定の「物的影響」の閾値(いきち)を上回っている。高江の子どもたちは学校でも住宅でも騒音に脅かされているのだ。
 このまま放置していいはずがない。防衛局は着陸帯の提供を取り消し、米軍はオスプレイの飛行を全面的に中止すべきだ。