<社説>米軍属飲酒事故 個人責任では済まされぬ


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 米軍属が県民を被害に巻き込む飲酒運転、車両事故がまたも発生した。女性暴行殺人事件を受けた「哀悼期間」中の飲酒事犯の続発だ。米軍が声高に喧伝(けんでん)する再発防止徹底がお題目にすぎないことが証明された。

 在沖米軍は基地外での飲酒、深夜外出の自粛を命じる「哀悼期間」を28日に解除すると発表したばかりだが、実効性のなさが証明された以上、期間の延長や、より厳格な対応を検討すべきだ。
 酒気帯び運転で逮捕された軍属の男は基準値の4倍ものアルコールが検出された。酒酔い運転に近い相当の飲酒量ではなかったか。
 国道を逆走する人身事故で自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)罪で起訴された海軍兵被告も、基準値の6倍のアルコールが検出されていた。
 日本に比べ飲酒運転に寛大な米国の文化風土が改まることなく持ち込まれてはいないか。日本の法令、規範を順守させる教育の不徹底とともに、沖縄県民に対する差別、植民地意識をうかがわせる。
 池宮城紀夫弁護士が重要な指摘をしている。「公務外の事故は軍人・軍属の個人に責任があり、損害賠償の判決が確定しても支払い能力がなく泣き寝入りすることがほとんど」。また「日米地位協定では軍人・軍属の給与差し押さえの規定がない」ことなどだ。
 日米地位協定は米軍人・軍属を特権的に保護し公正な刑事訴追を妨げているが、事件事故の補償の面でも県民・国民に不利益を強いているという指摘である。
 今回の米軍属による女性暴行殺人事件で、日本政府は米側の意向を酌む形で、日米地位協定の対象から軍属を除外する方向で調整している。
 沖縄からの地位協定の抜本改定の要求に対し、トカゲのしっぽ切りのように軍属のみを除外して鎮静化を図る思惑が透けて見える。
 一方で軍属による事件事故の民事賠償が、これまで以上に個人責任として放置され、米国と日本政府の責任が免除されることがあってはならない。
 軍人・軍属をひっくるめた抜本的な日米地位協定の改定。事件事故が公務中か公務外に関わらぬ日米政府の共同責任による十全の被害補償。そして基地あるが故の事件事故をなくすためには、構造的暴力装置の基地を撤去、縮小していくしかない。