<社説>辺野古着工2年 民意尊重すれば解決する


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 「辺野古が唯一」と繰り返す限り、問題は解決しない。

 政府が名護市辺野古の新基地建設予定地で陸上の工事を開始してから2年たった。今年3月4日以降、工事は止まっている。新基地を造らせないという県民の強い意志と行動が、国のスケジュールを遅らせている。
 国は「辺野古移設」を白紙撤回した上で、県と話し合いによって解決の道を探るべきだ。
 着工後、前知事が承認した米軍普天間飛行場の移設のための辺野古沿岸部埋め立てを、翁長雄志知事は2015年10月に取り消した。国は知事の取り消しを撤回させるための代執行訴訟を起こした。今年3月、裁判所の提案を国、県双方が受け入れて和解が成立した。以来、工事は止まっている。双方はいったん訴訟を取り下げて円満解決に向けて協議することになった。
 しかし国は、和解からわずか3日後、県に埋め立て承認取り消しの撤回を求める是正指示を出し、再び法廷闘争に向けた手続きに入った。これに対し県は、国の是正指示を不服として国地方係争処理委員会に審査を申し出た。
 係争委は国と県が移設問題を巡り対立する状況は好ましくないとして「普天間飛行場の返還という共通の目標に向けて真摯(しんし)に協議し、双方が納得できる結果を導き出す努力をすることが、問題解決に向けての最善の道」と指摘した。
 このように裁判所の和解案と係争委の結論は国、県に話し合いを求めている。
 ところが、萩生田光一官房副長官は6月30日、「辺野古への移転以外の方法はないという信念の下に対応してきた」と述べ、従来の政府見解を繰り返した。国が思考停止した状態で協議しても、県との溝は埋まらない。
 2000年の地方分権改革により、国と地方は対等・協力関係と位置付けられた。意見が対立した場合、それを調整するのが政治である。しかし安倍政権は、沖縄県を対等な関係ではなく、国に従属させる対象としてしか見ていないのではないか。
 米軍普天間飛行場は沖縄戦の最中に住民の土地を奪って建設された。条件を付けずに返還するのが筋である。
 辺野古に新基地を造らせないという民意を尊重すれば、問題は解決するはずだ。