<社説>同性パートナー認定 多様性尊重する社会に


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 性の多様性を尊重する新制度が始まる。その意義を社会全体で受け止め、実りあるものとしたい。

 那覇市は、戸籍上の性別が同一のカップルを結婚相当と認める登録証明書の申請受け付けを開始する。東京都渋谷区、世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市に続く全国5番目の措置だ。
 那覇市は昨年7月、「性に関するあらゆる差別や偏見をなくし、誰もが安心して暮らせる都市」を目指し、「性の多様性を尊重する都市・なは」を宣言した。証明書交付は同宣言の理念を具現化する施策だ。市の積極的な取り組みを評価したい。
 1980年代に県内初の「女性室」を設置するなど、那覇市は他自治体に先駆けて女性施策を進めてきた。性の多様性に関しても、市女性センターが97年から性的少数者への理解を広げるための講座を開設した。性的少数者が生きやすい社会の実現を目指すイベント「ピンクドット沖縄」に2013年の初回から共催してきた。
 このような先駆的な取り組みは、性的少数者を巡る差別や偏見を取り除き、共生社会を目指すための世論形成に大きな役割を果たしてきた。その延長上に今回のパートナーシップ証明書制度がある。ぜひ他自治体も追随してほしい。
 課題も残されている。現時点で那覇市の制度は条例化されていない。国が法改正しない限り、男女の夫婦では認められる相続や税金控除という恩典も生じない。
 那覇市は今後、市営住宅の入居申し込みや医療機関の手続きで、証明書を交付されたパートナーが親族扱いとなるよう調整を進めるとしている。本制度がより実効性あるものとなるよう市の取り組みを求めたい。条例化に向けては議会の理解が必要だ。性の多様性を尊重する地域社会の実現に向け、前向きの議論を期待したい。
 制度に対する民間事業者の理解も不可欠だ。男女間の夫婦を対象とした民間の諸制度や各種サービスの適用範囲を同性カップルにも広げたい。
 証明書の効力を公的窓口に限定してはならない。性の多様性を尊重する社会づくりに向け、民間事業者の積極的な参画が必要だ。
 その環境を整える前提として、市民全体で「性の多様性を尊重する都市・なは」宣言を共有し、制度の周知を図るべきだ。性的少数者の人権を尊重する社会づくりを沖縄から発信したい。