<社説>イラク戦争検証 日本は誤り認めるべきだ


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 無責任極まりない。安倍政権は、イラク戦争で米英の武力行使を支持した判断を「妥当」とする立場を維持するという。参戦国の多くが「判断を誤った」と結論付ける中で、国際世論と歴史の事実に背を向ける欺瞞(ぎまん)に満ちた態度だ。

 米英軍を中心に2003年に始まったイラク戦争は、イラクが「大量破壊兵器を保持」し、「国際テロ組織アルカイダを支援している」ことが大義とされた。
 しかしイラク国内から大量破壊兵器は見つからず、アルカイダ支援の疑いについても、米国防総省ですら「決定的証拠はなかった」と結論付けている。開戦の大義は完全に失われたのである。
 英国の独立調査委員会は6日、英国の参戦は失敗だったと結論付ける最終報告書を発表した。これに対し日本は、世耕弘成官房副長官が同日の記者会見で、米英の武力行使を支持した小泉政権の判断を「今日でも妥当性を失うものではない」とする強弁を重ねた。
 イラク戦争を主導した米英は、独立調査委員会で厳密な検証を行ったが、日本政府は第三者機関の調査も行わないまま「大量破壊兵器が存在しないと証明する情報はなかった」と、おざなりの釈明を続けているのである。
 このような無責任な態度が国際社会に受け入れられるだろうか。
 イラク戦争は多くの犠牲をもたらしたが、それだけではない。戦争の混乱が、国際社会をテロの脅威にさらす過激派組織「イスラム国」(IS)が台頭する遠因になったと言われている。
 ISはバングラデシュ飲食店襲撃テロの犯行声明に続き6日、新たなテロを予告した。欧米など「十字軍」への攻撃を呼び掛けたが、ISは以前から日本を「十字軍の参加国」と見なしている。
 イラクへの武力行使支持を正当化し続ける日本の態度は、ISなど国際テロ組織の日本に対する不信感をさらに増幅させかねない。
 日本政府は安全保障法整備や日米ガイドライン改定で日米の軍事一体化を進めているが、欧米を敵対視する国際テロ組織との緊張関係を助長することになりはしないか。
 日本はイラク開戦支持の検証を誠実に進め、誤りは誤りと認めることでイラクほかイスラム諸国の不信感を解くべきだ。そして日本がテロの対象にならぬよう、米国支持一辺倒の姿勢を改めるべきだ。