<社説>辺野古崎遺跡認定 徹底調査で全容解明を


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 米軍キャンプ・シュワブ内の新基地建設予定地と重なる陸上部・海域で、県教育委員会は新たな遺跡「長崎兼久遺物散布地」を認定した。

 専門家によると、長崎兼久遺物散布地は、数千年前にこの地域に住んでいた人々の歴史から、近世・近代の海上交通の様子までを知ることができる大変貴重な遺跡だという。
 文化財保護法に従って本格的な調査が待たれる。同地域は「地下の博物館」とも言われる。今回の現場はもとより基地内全体の悉皆(しっかい)調査など徹底的な調査を実施して全容を解明すべきだ。
 名護市教育委員会が実施した試掘調査で近世琉球期(1609~1879年)や近代の遺物が出土した。隣接する大又(うふまた)遺跡から出土した貝塚時代後期(2000年前~800年前)の遺物とは明らかに年代が異なっており、遺物の年代の違いが遺跡認定の決め手となった。中世に琉球王国や中国が船舶の木製いかりの重りに用いた文化財の碇石(いかりいし)も見つかっている。
 文化財保護法に基づき、事業主体の国は、遺跡の調査を求めている名護市との協議が必要になり、協議終了まで新基地建設工事が中断する。協議終了後は同遺跡の本格的調査を実施する。調査が完了するまでは工事で地形を改変する行為は禁止されている。
 菅義偉官房長官は「決まりに従うのは当然だろう」と述べ、文化財保護法に沿って対応する考えを示している。同法の精神に従えば、工事を強行することは許されない。
 これまで米軍基地内に自治体は自由に立ち入れず、遺跡調査は十分行われていない。基地建設の過程で破壊された遺跡があるかもしれない。さらに貴重な遺産が埋もれている可能性もある。この機会にしっかり調査すべきだ。
 一方、戦没者の遺骨収集を続けているボランティア団体「ガマフヤー」の具志堅隆松さんは、シュワブ内の大浦崎収容所跡で戦没者の遺骨調査の必要性を訴えている。「調査もせず基地を造るのは戦没者の冒涜(ぼうとく)意外の何ものでもない」という理由からだ。遺跡調査で工事が止まるこの機会に、遺骨調査は可能ではないか。
 文化財保護法第1条は、文化財の保存と活用を図ることを規定している。私たちは、法の規定を守り貴重な遺産を後世に残す責務がある。