<社説>久辺3区補助金継続 ばらまきで民意得られない


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 「地元の地元」を懐柔することが、米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古の新基地建設強行のお墨付きになるのか。政府は、新基地建設地に最も近い久辺3区へ直接補助金を交付する再編関連特別地域支援事業を次年度以降も継続すると23日、3区長に直接伝えた。

 国からの補助金は本来、市町村を通じて各自治会に交付される。しかし在日米軍再編交付金に基づく支援事業は、辺野古新基地に反対する名護市を通さず直接3区へ支出される。
 米軍再編交付金は、原発立地自治体を対象とする電源3法交付金を模したものだ。国は原発を、電源交付金という「アメ」を使って過疎や失業に悩む地方に受け入れさせた。弱者に米軍基地や原発の負担を押し付け、金で片を付けるのがこの国の常とう手段だ。
 日本一の清流と言われる四万十川のほとり、高知県の旧窪川町(現四万十町)は原発計画を白紙に戻させた。一時は31億円余の交付金を当て込み、「地元の地元」の町長も賛成した。
 全国にはこうした事例が多くある。いずれも補助金を使って住民間に対立をもたらし、地域の分断を図り、計画を進めやすくする。
 1996年に辺野古が移設先とされた当初、久辺3区は移設に反対していた。しかし2006年に島袋吉和名護市長が移設案に同意した後、辺野古と豊原は条件付き容認に転じた。久志は反対を貫く。
 久辺3区への説明の前日、政府は翁長雄志知事が取り消した辺野古の埋め立て承認について、国の是正指示に従わないとして県を提訴した。キャンプ・シュワブ陸上部分の工事再開も通告している。
 新基地建設が争点になった参院選で、反対を訴えた候補が現職大臣を大差で破り、県民は民意を示した。知事や名護市長だけでなく県民の多くが反対する中で、政府にとって「地元の地元」が了解している形は、工事再開に向け何としても必要なのだろう。
 しかし国策を推し進めるためになりふり構わず補助金を落とす手法は、沖縄社会の賛意を得られるとは思わない。十分な監査機能を持たない自治会など任意団体へ公金を投じるのは補助金適正化法にも違反する疑いがある。
 移設計画に必要なのは金のばらまきでなく、政府が県民の反対の民意を受け入れて計画を見直すことだ。