<社説>立木無断伐採 無法者の工事は許されない


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 沖縄防衛局が米軍北部訓練場内の立木(りゅうぼく)を無断で伐採していた。胸の高さで直径4センチ以上の国有林野の立木を伐採する場合、国有財産法に基づいて沖縄森林管理署との事前協議が必要だ。防衛局は「事前に協議しなければならない木はない」と説明していた。しかし実際は勝手に伐採していた。順法精神が欠如しているのではないか。

 防衛局は国有林野をヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の工事用道路にするため、森林管理署に申請して使用承認書を受けている。しかし立木は伐採しないとして事前協議はしていなかった。
 これに対して市民団体は「両側から木が茂っている場所で、伐採せずに(道路として)使用するのは不可能だ」と指摘し、伐採を疑っていた。しかし中谷元・防衛相(当時)は「立木を伐採する必要性は生じていない」と否定していた。だがそれは事実ではなかった。防衛局は現地で約60本の立木を伐採していたのだ。
 立木伐採の事実は防衛局が明らかにしたのではない。沖縄森林管理署長らが基地内に立ち入り、現地で伐採を確認したことで初めて判明した事実だ。つまり一般の目が届かない基地内であることをいいことに、防衛相や防衛局が虚偽の説明を続けていた。
 森林管理署は伐採を確認した直後に中止を指示した。しかし2日後に「伐採の影響は軽微だ。事後で協議が成立した」として中止指示を撤回し、一転して伐採を容認している。署長は「誤伐であり、悪質性はない」と説明している。
 伐採の有無は現地に行けば一目瞭然のはずだ。防衛局は伐採を疑われても、きっぱり否定していた。なぜ森林管理署が現地確認するまで防衛局は伐採の事実を把握できなかったのか。現地を見ていなかったというのか。実に不可解だ。
 森林管理署長が言うように、本当に「悪質性はない」のだろうか。伐採の事実を把握しながら、隠蔽(いんぺい)していたのではないかと疑わざるを得ない。
 この工事はほかにも法律違反が見つかっている。県道に設置した金網も、道路法上の県の同意を得ずに設置して、県から「不法物件」だと指摘を受けた。
 政府が法律を無視する。これで法治国家といえるだろうか。無法者として、なりふり構わず工事を進めることなど許されるはずがない。