<社説>シールズ解散 市民が活動引き継ぎたい


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 安全保障関連法への反対を訴え続けた若者グループ「SEALDs(シールズ)」が解散した。

 活動期間は1年余と短かった。だが充実した活動で、市民の積極的な政治参加の機運づくりに大きな足跡を残した。政治に無関心とされてきた人たちも、シールズの訴えに共鳴して立ち上がったことは特筆に値する。
 シールズは抗議活動のイメージを大きく変え、政治に対する抗議集会に若者が参加しやすい雰囲気を生み出した。打楽器に合わせて「民主主義って何だ」「勝手に決めるな」とリズミカルに訴えるスタイルは新鮮だった。メンバーの力強い訴えと行動力に大きな希望を見いだした人は多かろう。
 シールズの活動をきっかけに、政治を政治家だけに任せてはならないとの声が次第に広がったことも評価したい。
 政治的な集会やデモと縁がなかった母親や学者、高校生、中年世代、高齢層が次々と団体を結成し、安倍政権に抗議の声を上げた。シールズが政治を身近な問題として考え、意見を表明することの大切さを多くの国民に気付かせた結果だろう。
 安保法案審議中、シールズが主導した国会前での抗議集会には、幅広い世代の市民が参加した。組織的な動員ではなく、市民がそれぞれの意思で参加したのである。
 参加者が声をそろえて求めた「戦争法案今すぐ廃案」は安倍政権に踏みにじられた。だが参加者に挫折感はなかった。市民の政治的目覚めが大きな収穫だったことの表れと言えよう。それにもシールズは大きな役割を果たした。
 解散会見で、メンバーは「これからは個人で思考し、判断して政治に関わっていきたい」と話した。市民が政治に関心を持ち、行動していくことを当たり前とする社会づくりへ向けた決意表明と受け取りたい。
 シールズは主権者である国民の持つ力を自覚させるなど、市民の政治意識を高めることに大きな功績を残した。今後は、市民がその活動を引き継ぎたい。
 シールズ琉球は活動を継続する。米軍北部訓練場でのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)新設や辺野古新基地建設が緊迫した状況にあるためだ。県民もシールズに学び、基地問題を真剣に考え、積極的に意見を表明したい。