<社説>教員超勤放置 労基法順守し健康を守れ


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 このままでは教職員の健康を守ることができない。法を順守し、勤務状況の把握を急ぐべきだ。

 県内全市町村の教育委員会が一部の例を除き、公立小中学校教員の退勤時間を把握できていないことが琉球新報社の調べで分かった。
 労働基準法に準ずれば、市町村教委は教員の勤務状況を把握する義務を負う。それが履行されていないのだ。労基法に抵触する恐れがあり、民間企業では許されない。このような異常事態を直ちに解消すべきだ。
 市町村教委は校長や教頭ら管理職に勤務状況の把握を一任しているというが、それが現実的でないのは明らかだ。管理職が退勤すれば、教員の勤務状況を把握する人はいない。これでは教員の厳しい労働環境が見過ごされる。
 市町村教委が教員の退勤時間を把握していないのは、時間外勤務手当を計算して、教員に支払う必要がないからだ。1971年に作られた規定に従い、月8時間の時間外勤務手当に相当する額(基本給の4%)を月給に上積みすることになっている。
 この規定は、今日の教育現場の実態から大きく懸け離れている。沖縄県教職員組合が2013年に実施した幼稚園と小中学校教職員の勤務実態調査によると、時間外勤務は月平均92時間に達している。「過労死ライン」とされている月80時間を超えているのだ。
 教員は過重な事務処理や部活動、学力向上対策に追われている。県教育庁によると、15年度に病休で休職した県内公立小中高校、特別支援学校の教員は過去最多の421人に上った。41・8%(176人)は精神疾患による休職である。
 教員総数に占める病休者数の割合は全国最悪レベルだ。教員の勤務状況を把握しなければ、病休の背景にある厳しい職場環境の放置につながりかねない。
 過労死対策を国の責務とする「過労死等防止対策推進法」が14年に成立した。労働者の命と健康を守る対策が急がれている。この動きから職員室を取り残してはならない。
 まずは市町村教委が勤務状況把握の仕組みを構築すべきだ。読谷中学校は今年5月にタイムカード制を導入し、沖縄市も10月中に市内24小中学校で教員が勤務時間を自己申告する仕組みを取り入れる。ほかの市町村も追随してほしい。
 県教委も主導的役割を果たすべきだ。学校現場任せではいけない。