<社説>自衛隊ゲリラ訓練 基地負担の増加は明白だ


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 米軍北部訓練場で自衛隊が、米軍との共同訓練を計画していることが防衛省の内部資料で判明した。米軍と一体の共同使用は明らかな「基地機能強化」であり許容できない。計画の撤回を求める。

 安倍晋三首相は今国会で、ヘリパッド移設により過半の北部訓練場が返還されるとして、「基地負担の軽減」を強調していた。
 この間、自衛隊の共同使用は一切、説明がない。「軽減」に反する訓練強化が、県に説明もなく内々に計画されていることに強い憤りを覚える。
 5日の県議会質疑で防衛省文書の存在が明らかになった。安慶田光男副知事は「これ以上県民の基地負担を増大させるわけにはいかない」と反対を表明した。
 県は防衛省に対し速やかに計画の詳細な説明を要求し、共同訓練反対を申し入れてもらいたい。
 同省の2012年の内部資料「日米の動的防衛協力について」によると、自衛隊は対ゲリラ戦の共同訓練を計画している。
 米軍はベトナム戦時下の1960年代から同訓練場でゲリラ戦訓練を続けている。自衛隊はこれに参加する思惑だろう。安保法制で米軍と自衛隊の一体化が進む。ゲリラ戦共同訓練は、世界のどの地域での実戦を想定しているのか。
 同訓練場を英国、イスラエル軍が自衛隊とともに合同視察したことも発覚している。なし崩し的にゲリラ戦訓練の拠点として基地機能強化が進む懸念を拭えない。
 「やんばる国立公園」は自然保護の管理が及ばない北部訓練場を除外した。本来、豊かな自然を有する北部一帯を国立公園とすべきだ。世界自然遺産を目指す観点からも、基地の固定化につながる自衛隊共同使用は認められない。
 北部地区は、辺野古新基地建設と連動するオスプレイ運用のヘリパッド建設、ステルス戦闘機F35の伊江島への着陸帯建設など、基地機能強化が一段と進んでいる。
 防衛省文書ではキャンプ・ハンセン、シュワブ両基地に自衛隊が常駐する構想も分かっている。北部一帯の米軍基地の機能強化と軌を一にして自衛隊も加わる訓練強化が進む。
 もはや96年の日米特別行動委最終報告が看板に掲げた「負担軽減」の欺瞞(ぎまん)性は明らかだ。
 県は政府に対し、自衛隊共同訓練の不当性とともに、北部地区で進む基地・訓練強化について追及してもらいたい。