<社説>宮古島市契約問題 徹底解明し説明責任果たせ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 公金を使った事業の契約でこれだけ問題が噴出すれば、行政はその過程を検証し、その結果を市民に丁寧に説明する必要がある。全ての処理が完了していることを理由につぶさに検証しないならば、市民の理解は到底得られない。

 宮古島市が2014年7、8月に一括交付金を活用して東京で実施した観光プロモーション事業の委託業者選定を巡り、疑念が生じている。
 最も大きな問題は、市に提出された文書が偽造された可能性があり、公金が適正に支出されなかった疑義が生じていることだ。
 市によると、宮古島まちづくり研究会(東京)が14年4月、この事業を提案した。市は指名競争入札方式を採り、研究会を通して3社に見積もりを依頼し、5月に埼玉の2社からそれぞれ約4200万円、約4300万円、研究会から3700万円の見積書が提出された。
 7月4日に一括交付金の交付が決定され、その日のうちに埼玉の2社が辞退届を提出し、市は随意契約方式に切り替え、研究会と3700万円で事業委託契約を結んだ。
 1社は頼まれて見積書を提出したことを認めたが、辞退届は提出していないとしている。別の1社に至っては見積書と辞退届のいずれの提出も否定している。
 2社が提出していないとする辞退届には社印が押され、筆跡は酷似しているという。第三者が文書を偽造した疑いがある。委任状もない。誰が辞退届を提出したのかも明らかになっていない。
 疑念だらけの契約問題を放置するならば、市政への信頼は大きく揺らぎかねない。だが、下地敏彦市長は「当時、書類上適切に処理した。全ての処理が完了しており、報道で(疑念が)あるからといって、何でいちいちやり直さないといけないのか」とし、検証には消極姿勢を示している。
 偽造が疑われる文書が提出され、市が欺かれた可能性が強く疑われていることを、市は重く受け止めるべきではないか。識者からは「問題が発覚した後に何もしないことが一番の問題だ」との指摘もある。
 市民の間には、委託業者は当初から決まっていた「出来レース」との疑念もささやかれている。市が今なすべきことは、一連の問題を徹底解明し説明責任を果たすことである。