<社説>高江の警察活動 「二重基準」を疑わせる


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 米軍北部訓練場の返還に伴う新たなヘリコプター着陸帯工事に関し、現場で活動する警察官、県警幹部に警察法を読み返してほしい。

 警察法3条にはこう書かれている。「警察の職務を行うすべての職員は日本国憲法及び法律を擁護し、不偏不党且(か)つ公平中正にその職務を遂行する旨の宣誓を行う」
 現状を見る限り、北部訓練場周辺では警察官としての初心を忘れたとしか思えない警察活動が続く。
 工事に必要な砂利を運搬するダンプカーに道路車両運送法違反の不正改造などが疑われるとして、沖縄総合事務局陸運事務所は、市民からの資料提供を受け、業者に実態を確認する予定だ。
 現場にいる警察官は、不正改造が疑われる車が目前を通過したのに、なぜ注意や指導をしなかったのか。
 抗議の市民らはブレーキランプ故障などわずかな整備不良でも注意されるという。目視だけで注意できるのであれば、ダンプカーにも同様に対処すべきであろう。市民から恣意(しい)的とみられかねない取り締まりは慎むべきだ。
 一方、名護署は抗議活動の中心人物である沖縄平和運動センターの山城博治議長を器物損壊容疑で逮捕した。提供施設と工事現場を隔てる有刺鉄線を切断したというのが逮捕容疑だ。この問題に対し、抗議活動の市民らは「抗議活動の中心人物を狙った」「運動を萎縮させる目的」などと批判している。
 工事を推進するためなら多少の不都合は見過ごしても、抗議する市民の側は徹底的に取り締まるという二重基準がありはしないか。これまでにも工事車両を警察車両が先導したり、工事車両の荷台に警察官を乗せて運んだりする例もあった。「不偏不党、公平中正」の理念を疑わせる。
 着陸帯建設に対しては、大宜味村議会や県議会などが工事中止を求める意見書を可決し、地元の東村は、集落近くに新設されたN4地区の着陸帯使用禁止を求める意見書と抗議決議を可決している。
 各議会に共通するのは、高江区や県民の反対を押し切って着陸帯建設が強行されることへの憤りだ。
 政府が沖縄の声に耳を傾けず、工事を強行することへの憤りが、訓練場内での阻止行動に市民を駆り立てている一面もある。警察は公平中正に市民と向き合ってもらいたい。