<社説>欠陥機配備撤回要請 飛行再開はあり得ない 返還式は県民を愚弄する


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 オスプレイの連続事故に対する県民の強まる危機感と怒りに向き合うそぶりさえ見えない。政府が県の要求をことごとく拒否するのは事故を重く受け止めていないからではないのか。

 翁長雄志知事がオスプレイは欠陥機だとして、沖縄配備撤回を政府に改めて要請した。墜落、胴体着陸とオスプレイの事故が相次ぎ、当然の要求だ。
 だが、若宮健嗣防衛副大臣は安慶田光男副知事を訪ねた際、撤回要求を拒否し、それどころか辺野古新基地建設推進を明言した。
 安倍政権には沖縄の過重な米軍基地負担の軽減を一切期待できないことが改めてはっきりした。

県民軽視許されない

 稲田朋美防衛相は翁長知事の抗議に対し「安全性に関して県民のみならず国民も重大な関心を寄せているオスプレイの今回のような事故に関して非常に遺憾である」と述べた。
 だが「遺憾」の真意は何なのか。事故で県民が恐怖を感じたことではなく、辺野古新基地に支障が出ることを「遺憾」としているようにしか聞こえない。
 その証拠に稲田防衛相は14日、オスプレイ墜落事故の辺野古新基地建設計画への影響について「関係者が誠実に履行していくということだと思う」と述べている。新基地建設を推し進めることしか念頭にないのではないか。
 オスプレイの安全性が疑われ、事故原因も確定しない中での新基地推進発言は無神経すぎる。そもそもオスプレイは沖縄本島全域を飛び回っており、新基地ができたからといって県民が危険にさらされる状況は変わらない。県民からすれば、飛行再開はあり得ない。
 翁長知事との会談で、稲田防衛相は「県民と国民が理解して、安全だということがない限り、飛行することはやめてほしいと(在日米軍トップのマルティネス司令官に)申し入れた」と述べ、「県民の理解」がオスプレイ飛行再開の条件とも受け取れる発言をした。
 だが、稲田防衛相は事故は「不時着水」だとし、墜落とは見なしていない。オスプレイは安全で、墜落原因である訓練を改善したとして「安全宣言」することは目に見えている。
 若宮防衛副大臣は安慶田副知事との会談で「東アジアの不安定な安全保障環境で、欠くべからざる装備になっている」として、オスプレイの配備撤回要求を拒否した。
 理解し難い。百歩譲って東アジアの不安定な安全保障環境にオスプレイが貢献しているとしても、沖縄県民の犠牲はどうでもいいのか。県民軽視は許されない。

重み受け止めるべきだ

 翁長知事は北部訓練場過半の返還式典について「重大な事故を起こしたオスプレイが代替施設であるヘリパッドで運用されるのは極めて問題であり、返還式も行うべきではない」とし、開催自粛を求めた。これも当然の要求である。
 北部訓練場過半の返還は、オスプレイが使用するヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設が条件である。ヘリパッドは東村高江の集落を取り囲むように配置されている。住民のことを考えれば、盛大に祝えるものではない。
 翁長知事と面談した杉田和博官房副長官は、みんなで努力して返還まできたとして「開催したい」と拒否した。
 一体、政府がどんな努力をしてきたというのか。
 総面積約7800ヘクタールのうち約4千ヘクタールの広大な土地が返ってくるが、米軍が使用できない土地を返すだけのことだ。その見返りに、政府が住民らの反対を押し切って、米軍にとって使い勝手のいいヘリパッドを造ることを努力と言えるのだろうか。県民を愚弄(ぐろう)する返還式典はやめるべきだ。
 翁長知事は「開催を見直さない場合、多くの県民の思いが踏みにじられ、政府への強い不信感をもたらすことになる」と稲田防衛相に伝えた。その言葉の重みを政府は受け止めるべきだ。