米軍や日本政府の言う「安全」は、やはり信用できぬ。
米空軍嘉手納基地で19日、P8哨戒機が事故を起こした。沖縄防衛局は「小さな破損」「軽微な事案」とするが、損害の程度の問題ではない。事故を起こしたこと自体、問題なのである。
13日には米海兵隊のオスプレイが名護市安部の浅瀬に墜落して大破した。別のオスプレイは米軍普天間飛行場に胴体着陸している。
県内で頻発する米軍機事故の背景に、米軍と日本政府の安全意識の欠如があることは明らかだ。相次ぐ事故に強く抗議し、全ての訓練中止を求める。
組織に構造的欠陥
米海軍によると、P8哨戒機は牽引(けんいん)装置が外れて胴体下部などが損傷した。日常的に実効ある整備点検や安全確認を実施しているのか疑わしい。
しかもオスプレイ墜落事故直後である。墜落事故を受けて、日本に駐留する全米軍は緊張感を持って安全な運用に取り組む責任がある。ニコルソン四軍調整官は在沖米軍にその徹底を指示したのだろうか。
牽引装置や整備に必要な機器に不具合がないかも含めて常に点検・確認する意識がなければ、万全な安全対策を取ったことにはならない。米軍の組織自体に構造的欠陥があると断じるしかない。安全対策を講じた上で、事故が起きたなら問題はさらに大きい。
沖縄防衛局が嘉手納町に事故を報告したのは20日である。遅過ぎる。基地内で起きた事故に県民は関係ないとし、連絡を急ぐ必要はないと考えるなら間違いだ。即座に県民に知らせるべきである。
防衛局が町に「牽引を伴う通常整備中、P8の前輪と胴体下部に小さな破損が生じた」「軽微な事案に対する調査が行われている」と報告したことも許し難い。損害は多額で最重大事故「クラスA」だが、大した事故ではないとの意識が見える。
相次ぐ事故に対する緊張感がないのではないか。防衛局が事故を矮小(わいしょう)化することでは米軍に緊張感を与えることはできない。その結果、事故も防げない。
整備体制に不備はなかったのかなどを米軍にただし、町に報告することは、防衛局の責務である。
四軍調整官はオスプレイ墜落事故に関連して「訓練にはリスクを伴い、危険も伴うことはある」とし、訓練中の事故発生を否定していない。今後も墜落を含む大事故は起きるということだ。
米軍と日本政府の言う「安全」は県民の安全を意味しないのである。訓練は県民を危険にさらす。訓練中止しか事故防止策はない。
政府の責任重大
安全に対する意識が低いのは米軍だけではない。日本政府も同様である。
菅義偉官房長官はオスプレイ墜落事故を受けて「米軍機の飛行に際しては安全面の確保が大前提だ」と述べた。これは何もオスプレイだけを指しての発言ではあるまい。
9月には米海兵隊のAV8ハリアー戦闘攻撃機が墜落し、今年だけでも県内では米軍機の墜落は2件も発生している。3カ月足らずで2件もの墜落事故が発生していることは「安全面の確保」ができた状況にはないということだ。日本政府は事故多発に重大な責任があることを自覚すべきだ。
オスプレイの飛行再開では、安倍政権は米軍の「安全宣言」をうのみにした。稲田朋美防衛相は「県民と国民が理解して安全だということがない限り、飛行することはやめてほしいと申し入れた」と翁長雄志知事に説明していたにもかかわらずである。
県民の誰がオスプレイの安全を理解し、認めたというのか。防衛相には説明する責任がある。
米軍と日本政府が事故を重く受け止めない姿勢こそが墜落事故の要因である。その姿勢が変わらぬ限り、沖縄の「負担軽減」は実現しない。