<社説>前副知事が告訴 公の場で真相解明果たせ


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 突然の辞職に続く刑事告訴である。安慶田光男前副知事の言動は、県の要職を担ってきた当事者の責任ある対応とは言い難い。

 口利き疑惑を巡り副知事を辞した安慶田氏は、疑惑が事実であると証言した前県教育長を名誉毀損(きそん)で告訴し、併せて損害賠償の裁判を起こした。
 記者会見で安慶田氏は「司直の手に委ねた案件であり、今後、捜査機関と裁判でのみ話す」と主張した。県の調査や県議会の追及には応じないと宣言したに等しい。不誠実と批判せざるを得ない。
 口利きの事実があったのか、なかったのか。県教育行政の公正な運営を疑わせ県政を揺るがす問題であり、県民の重大関心事だ。副知事を辞しても安慶田氏は疑惑解明の責任を免れない。刑事、民事の裁判とは別に、県の調査や県議会など、公の場での真相解明に誠実に協力する責任がある。
 安慶田氏は教員採用試験の口利きについては重ねて否定した。一方、県教育庁人事については「前教育長に推薦や要望を口頭で伝えた」と介入を認めた。
 知事に次ぐ県政の権力者が教育庁人事に介入したのは不適切であり、批判を免れない。
 驚くべきことに「議員、教育庁幹部、校長や教員OBなどから人事の推薦要望や意見が持ち込まれた」。それを「毎回ではないが前教育長に伝えた」というのである。
 衝撃的な発言である。副知事に対する情実人事の口利き依頼が横行していた疑いがある。事実であれば公平公正を旨とすべき県政への県民の信頼を大きく失墜させるものだ。
 議員や教育庁幹部のほか、どのような立場の者が口利きを依頼したのか。それをどう前教育長に伝えたのか。不適切な人事が実行されたことは本当になかったのか。
 副知事を介する不適切な口利きは今に始まったことなのか。悪(あ)しき慣行として教育庁人事に限らず、県庁人事や他の業務に及んではいまいか。
 県が徹底的に全容を解明し、口利き根絶の抜本策を講じなければ、県政への信頼は回復できない。
 公職を去った私人として口をつぐむことは許されない。安慶田氏に誠実な対応を求める。
 翁長雄志知事の任命責任も問われている。腹心として支えてきた安慶田氏は県政の混乱を一日も早く収拾させる責任がある。