<社説>国有地格安売却 何から何まで疑問だらけだ


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 国民の財産である国有地が破格の安値で払い下げられた。何から何まで疑問だらけである。会計検査院は不透明な経過を調査する。安倍政権は真相を明らかにする責務がある。国会も徹底調査し、国民に広がる疑念に応えるべきだ。

 大阪府豊中市の国有地約8770平方メートルが昨年、学校法人「森友学園」にことし4月開校予定の小学校用地として1億3400万円で売却された。国の評価額のわずか14%である。
 評価額は9億5600万円だったが、学園が「地下に埋まったごみがある」と連絡し、国土交通省大阪航空局がごみ撤去費用を8億1900万円と算定し、評価額からこの額などを大幅値引きした。
 加えて、国は汚染土壌の除去費用として1億3200万円弱を支払った。国が得たのは200万円余で、学園は「ただ同然」で土地を手に入れた。国家財政に寄与しない資産売却は到底納得できない。
 ごみ撤去費用や契約の経緯についても疑念ばかりが募る。学園側はごみ撤去は校舎部分だけ行い、運動場は工事していないという。撤去する土砂搬出を担った業者から「土は敷地内に埋めた」とする証言も飛び出した。
 国は地中のごみをどう確認し、撤去費を算定したかについて明確に説明できていない。実際にどれだけの量のごみがあり、撤去費用にどれだけ要したかも学園側に確認していない。
 当初、財務局は売却額を非開示とし、野党に追及されて明らかにした。さらに売却交渉の記録を廃棄していた。隠蔽(いんぺい)さえ疑われるないないずくしである。取引は昨年のことであり、電子データなどが残っているはずだ。すぐに探し出し、事実を報告せねばならない。
 「教育勅語」を幼稚園児に暗唱させている森友学園は、在日韓国人や中国人への憎悪表現に近い文書を保護者向けに配布した。籠池泰典理事長がコラムで、翁長雄志知事について「娘婿も支那人。中共(中国共産党)に従いたいと心から思っている」などと事実に基づかない内容を記してもいた。教育機関としての適格性も検証する必要がある。
 学園は名誉校長に首相夫人の昭恵さんを据え、一時「安倍晋三記念小学校」名目で寄付金を集めていた。夫人は辞任し、首相は払い下げへの関与を否定している。理事長の参考人招致など、与野党で真相を徹底究明してほしい。