<社説>米軍の降下訓練 政府は国民の安全に責任を


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 在沖米軍は、ここが人の住む島だと思っていないのではないか。

 米空軍が23日、うるま市の津堅島訓練場水域でパラシュート降下訓練を実施した。市にはその2日前、沖縄防衛局から「23、24日にパラシュート降下訓練があるかもしれない」と通知があったが、訓練時間も場所もあいまいだった。
 同水域では1月12日にも、通知なく降下訓練が実施された。現場海域は漁船が行き交い、モズクの養殖場でもある。降下訓練は衝突などの危険が伴い、一つ間違えば漁船などが巻き込まれる恐れもある。その際も県やうるま市が抗議したが、米軍は聞く耳を持たず、訓練は繰り返された。
 米軍のパラシュート降下訓練は、基地負担軽減を名目にしたSACO(日米特別行動委員会)合意で伊江島補助飛行場に移転された。2000年7月以降は日本側が経費を負担し、訓練は伊江島のみに移転されたことになっている。
 しかし米軍は1月のうるま市沖での訓練に続き、17日は嘉手納基地で「高度3千メートル以上の上空から複数の投下訓練」を計画していた。伊江村では1月10日にパラシュート降下の米兵が米軍施設外の畑に降下した。
 在沖米軍は「海域での訓練は認められている」と主張するが、海域のみならず嘉手納基地なども使い、また伊江島ではたびたび着地に失敗して基地外の民間地に降りている。
 さらに米海兵隊は宜野座村城原区の民間地上空などでMV22オスプレイによるつり下げ訓練も行っている。
 度重なる訓練で、県民が思い起こすのは、1965年に起きた読谷村での女児圧死事故だ。米軍がパラシュートで投下したトレーラーが民家に落下し、小学5年の女児が犠牲になった。
 日本と同じく米軍が駐留するドイツでは、米軍は訓練の計画を事前にドイツ政府に提出することが義務付けられている。イタリアでも米軍は訓練内容を事前に調整し、許可を得る必要がある。
 しかし在日米軍は日米地位協定に基づき、訓練計画の事前通告義務は負っていない。米軍の傍若無人な訓練を日本政府が追認しているのだ。
 私たちの生活を脅かす全ての降下、つり下げ訓練の中止を求める。日本政府は国民の安全に責任を負い、米軍訓練を止めさせるべきだ。