<社説>「森友小」取り下げ 幕引きにしてはならない


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 学校法人「森友学園」の籠池泰典理事長が大阪府豊中市の旧国有地で計画していた小学校開設を断念し、認可申請を取り下げた。

 異なる校舎建設費を記した契約書3通の存在や、認可申請に絡み児童確保策や教員リストなどを府側に虚偽報告した疑いなどが次々と明るみに出た。
 だが籠池氏は納得いく説明を一切していない。にもかかわらず、籠池氏は「再びチャレンジする。今まで以上に子どもの育成をする」と述べ、別の場所での学校建設を目指す意向を示している。
 籠池氏自身が全ての疑惑に答え、不正が一切なかったことを証明しない限り、教育に携わることはやめるべきではないか。
 学園は認可申請に際し、財政状態を説明する資料の一つとして代金7億5600万円と記載された工事請負契約書を府に提出した。その一方で、国土交通省の補助金申請には約23億8400万円、関西エアポートへの助成金申請では約15億5500万円と記された契約書を出した。
 施工業者は府私学課に提出した契約書は、学園側の虚偽説明に基づき作成したと説明している。学園側が財政負担を軽く見せ掛けて開設を有利にし、補助金・助成金を最大限得るためだったのではないか。その疑念を払拭(ふっしょく)できない。
 愛知県の私立学校と推薦入学枠の提供で合意したと府に報告した件も、実際にはなかった。
 認可申請を取り下げたからといって、これで責任なしとはならない。学園側は国交省から補助金約5600万円を受け取っている。返還すれば済むということにはならない。
 府私立学校審議会(私学審)は2015年1月に「認可妥当」を答申した。籠池氏は「認可適当の結論が出たから、国有地を定期借地して買収した。それがなかったら(校舎は)建てなかった」と述べている。
 私学審会長はことし2月、「よほどのことがない限り3月下旬には認可証が交付される」との見通し示していた。虚偽申請疑惑は「よほどのこと」だ。籠池氏は自らの責任を深く自覚すべきである。
 政治家の口利き関与などは、国会で解明しなければならない。自民党は参考人招致に応じるべきだ。小学校の認可申請取り下げで、幕引きにしてはならない。