<社説>籠池氏証人喚問 疑惑解明には程遠い 関係者の招致が不可欠だ


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 国有地の格安払い下げなどで政治家らの関与はあったのか、安倍晋三首相は100万円を寄付したのか。数々の疑惑は一切晴れず、真相解明には程遠い。

 衆参両院の予算委員会は大阪市の学校法人「森友学園」の理事長退任意向を表明している籠池泰典(本名・康博)氏を証人喚問した。これで幕引きにしてならない。疑惑の全容解明には昭恵首相夫人を含め、関係者の証人喚問が不可欠だ。
 真実が闇の中では、国民の政治不信は払拭(ふっしょく)できない。森友学園問題を巡る疑惑の解明に、国会も安倍政権も全力を尽くすべきだ。

 証言の詳細な検証必要

 籠池氏は「(昭恵夫人付きの政府職員に)財務省に多少、働き掛けをいただいた。生活ごみが出た後、急転直下、物事が動いたという考え方もあろうと思う」と述べた。事実ならば、昭恵夫人の関与が強く疑われる。安倍首相の進退にも影響する事案である。
 籠池氏は国有地の取得を巡り、政治的な関与が「あったと思っている」と明言した。自民党や日本維新の会の3人の政治家に、小学校設置で協力を依頼したとも述べている。
 籠池氏が「想定外の値下げにびっくりした」と驚くほどの低価格での売却である。政治家関与の疑念は深まった感すらある。
 財務省の佐川宣寿理財局長の部下から顧問弁護士を通じ「10日間隠れていてと伝えられた」との証言も双方で食い違いがある。事実関係を早急に明らかにせねばならない。
 大阪府私立学校審議会(私学審)は2014年12月、森友学園が申請した小学校開校を認可保留としたが、15年1月に一転して「認可適当」と答申した経緯も不可解だ。借地上の校舎建設計画を私学審が「認可適当」と判断したのは、審査基準に抵触した疑いがあると府は指摘している。
 籠池氏は小学校設置認可申請について、大阪府の松井一郎知事の力添えを得られるように、元府議会議長にお願いし、府の総務部長に「特別な取り計らいをいただいた」とも証言している。松井知事も府の総務部長も関与を否定している。どちらが真実なのか、はっきりさせねばならない。
 籠池氏の証言だけで「政治的な関与」があったかどうかは判断できない。籠池氏の証言を詳細に検証する必要がある。それには籠池氏が名前を挙げた政治家や財務省、大阪府などの関係者を証人喚問しなければ、実態解明は進まない。

 昭恵夫人は自ら説明を

 籠池氏は、15年9月に学園が運営する幼稚園で講演した昭恵夫人が同行者を退室させて籠池氏と2人になった時点で「どうぞ安倍晋三からです」と封筒に入った100万円の寄付を差し出し、それを受け取ったと主張した。
 安倍首相は寄付を全面否定している。籠池氏も明確な物証などを示しておらず、誰の言葉が事実か分からない。だが、籠池氏が安倍首相から寄付を受けたとの主張を貫いている以上、安倍首相側には丁寧に説明する責任がある。
 籠池氏は最近になって昭恵夫人から「口止めと受け取れるメールが(妻に)届いた」と述べている。菅義偉官房長官は「(口止めは)全くない」と否定したが、菅長官の代弁ではなく、昭恵夫人自ら説明することを求めたい。公の場で話さなければ、国民の疑念は募る一方である。
 菅長官は昭恵夫人の国会招致に「法的に問題のない行為について、関係者の招致は慎重であるべきだ」と否定的な見解を示している。首相夫人の虚偽発言が疑われる事案であり、招致は当然だ。
 籠池氏が証言したように、学園が計画していた小学校の名誉校長に昭恵夫人が一時就任していたことが、森友学園の社会的な信用につながったことは否定できない。法的に問題はないにしても、昭恵夫人は進んで説明すべきである。