<社説>通学費の負担軽減 行政と民間の支援急務だ


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 通学費を稼ぐためにアルバイトに追われ、充実した学園生活を送れずにいる高校生を放置してはならない。行政、民間が一体となった支援策が急務となっている。

 県立北部農林高校(名護市)でバス通学をしている生徒の6割が通学費を捻出するためにアルバイトをしていることが琉球新報社の調査で明らかになった。バス通学者の約2割は月額2万5千円以上の高い交通費を負担している。
 本島北部全域から生徒が通う北部農林高の厳しい通学事情が明らかになった。もちろん一高校に限った問題ではない。広域から生徒が集まる高校では似たような状況にあることが推測できる。
 県が実施した高校生調査も、生徒や家族が通学費捻出に苦慮している実態を明らかにした。特に困窮世帯では深刻だ。
 アルバイトをしている困窮世帯の生徒のうち、4人に1人はアルバイト収入を通学費に充てている。交通費を削るため、家族が自家用車で生徒を送迎するケースも多い。自家用車送迎が多い北部農林高も事情は同じであろう。
 都市部に比較して公共交通機関の整備が不十分な地域や困窮世帯の生徒は通学費の確保に苦しんでいる。通学費を稼ぐためアルバイトに時間を割くあまり、学業がおろそかになる恐れもある。その結果、退学に追い込まれるのでは生徒の可能性を摘むことになる。
 本来、住んでいる地域や高校によって通学費負担に大きな格差があってはならない。困窮世帯も含め、通学費を軽減する支援策が不可欠だ。行政、民間双方の対応を早急に考えたい。
 北部広域市町村圏事務組合によると、離島地域から本島の高校へ進学する場合、自治体予算と県の一括交付金を活用して生徒の生活費を支援している。交通費の支援もできないか検討してほしい。
 バス会社にも支援策を求めたい。沖縄都市モノレールは困窮世帯の生徒を対象に、運賃を約半額にする「通学費負担軽減措置」を4月から実施する。
 バス各社は厳しい経営環境にあり、大幅な運賃割引の実施は困難だ。バスで通学する生徒の利便性を考慮した路線再編やスクールバス運行の可能性を追求してほしい。
 希望を抱いて高校に通う生徒を支えることは社会の責務だ。通学費支援は沖縄の次代を担う若者への投資であることを確認したい。