<社説>米、北朝鮮攻撃言及 中国と協調し核開発阻止を


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 米政府は北朝鮮の核・ミサイル問題を巡り、北朝鮮への軍事攻撃に踏み切る可能性に言及した。しかし、武力衝突は避けなければならない。大国の米中が緊密に連携し、外交圧力などを通じて、核・ミサイル開発を阻止すべきだ。

 北朝鮮は国際社会の警告を無視し、核実験と弾道ミサイル発射を繰り返している。日本のほぼ全域を射程に収める中距離ミサイル「ノドン」は既に実戦配備されている。近く6回目の核実験に踏み切る可能性も指摘され、緊張が高まっている。
 これに対しトランプ米政権は、シリアに続き、北朝鮮への軍事的圧力を強めている。4月上旬の日米高官協議で「中国が北朝鮮への圧力を強化するか、米国がストライク(攻撃)するか、二つに一つの選択肢しかない」と明言したという。米中首脳会談でトランプ氏は習近平主席に、中国の協力が得られなければ「単独行動」も辞さないと伝えた。
 既にトランプ政権は米海軍、原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群を朝鮮半島近くに向かわせている。一部米メディアは、ミサイル駆逐艦などで構成する水上戦闘群も空母打撃群に合流すると報じた。
 さらに日米がカール・ビンソンと海上自衛隊の護衛艦による共同訓練を近く実施する方向で調整している。連携してけん制を強めるというが、北朝鮮が反発して更に挑発行動に出れば、不測の事態を招きかねない。
 むしろ日本は唯一の被爆国として、対話による解決を国連や米中に働き掛けるべきだ。核問題を巡る6カ国協議の議長国である中国に、協議再開を求める方法もある。
 北朝鮮の貿易額の9割は中国が占める。北朝鮮との貿易を制限するなど、中国には実効性のある措置を求めたい。
 米国の歴史家バーバラ・タックマンは著書「八月の砲声」で、第1次大戦が1発の砲声をきっかけにして大国の思惑や誤算、過信が重なり、世界が雪崩を打って大戦に巻き込まれる様子を描いた。この本を読んだケネディ大統領は、武力衝突を避け、外交によってキューバ危機を回避したといわれる。
 トランプ大統領は、朝鮮半島の緊張をエスカレートさせてはならない。米中がこの地域の安定のために協力して外交力を発揮する必要がある。