<社説>国税「支払い超過」 沖縄優遇論 虚構にすぎず


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 2015年度の県内の国税徴収額が初めて3500億円を超え、内閣府沖縄関係予算額(補正後)を4年ぶりに上回った。16、17年度も増加が見込まれ、沖縄関係予算に対する「支払い超過」が定着しつつある。都道府県別の国税徴収額は29位と中位にあり、自立経済の足腰が強まっていると見ることができる。

 沖縄関係予算については、基地負担の見返りに優遇されているという誤解が根強い。しかし「支払い超過」は優遇論が虚構にすぎないことを示す。この事実を全国に伝えていきたい。
 優遇論の根拠の一つが、沖縄関係予算が他県と同様の国予算に上乗せされているという誤解だ。他県では各省庁が個別に計上している道路、港湾、病院などの整備費用を、沖縄では内閣府沖縄担当部局が一括して計上しているにすぎない。他県に比べて優遇されているという事実はない。
 優遇が事実でない以上、沖縄関係予算を基地の見返りと言うことはできない。沖縄関係予算の根拠法である沖縄振興特別措置法は、沖縄の歴史や自然的条件を踏まえて復帰後の本土との格差是正や沖縄経済の自立的発展のために沖縄振興を実施するとしている。
 近年、閣僚らから「沖縄予算は基地とリンクしている」という趣旨の発言が相次ぐが、これは沖縄振興法の趣旨をねじ曲げるものであり厳しく批判されるべきだ。
 支払い超過となったのは05年度以降の11年間で7回目である。沖縄関係予算の伸び悩みもあるが、観光などにけん引されて沖縄経済が着実に発展していることは事実だ。基地返還跡地活用の効果も大きい。その結果、県民総所得に占める基地関連収入は復帰直後の15・5%から減少し、最近は5%程度で推移している。
 沖縄県は、市街地を分断する基地は経済発展の最大の阻害要因だと主張してきた。現在、本島北部で米軍基地建設が強行されているが、基地を返還して豊かな自然を生かした方が経済発展につながる。「基地がなくなったら沖縄経済は立ち行かない」という言説は迷信でしかない。
 「支払い超過」が定着しつつある事実は、県の主張を裏付けるとともに沖縄経済の方向性も示している。このような具体的事実を積み上げて沖縄優遇論、基地見返り論、沖縄経済基地依存論の虚構を払拭(ふっしょく)しよう。