<社説>米軍降下訓練強行 常態化は断じて認めない


この記事を書いた人 琉球新報社

 傍若無人な振る舞いは軍隊の本質である。地元の声を一切聞かない米軍に沖縄駐留の資格はない。

 米軍は4月24日に続き10日夜、嘉手納基地でパラシュート降下訓練を強行した。県民の安全な暮らしに配慮する必要はないと宣言したも同然だ。県や周辺自治体の中止要求を無視し、より危険な夜間訓練を実施したことに強く抗議する。
 嘉手納町と沖縄市、北谷町でつくる「嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会」は4月の訓練翌日、沖縄防衛局に抗議した。県議会をはじめ、関係自治体の議会も抗議決議などを可決した。
 県議会の抗議決議・意見書は「一歩間違えば周辺住民を巻き込む重大な事故を引き起こしかねない極めて危険な訓練で、基地負担の増大にほかならず到底容認できるものではない」と嘉手納基地での降下訓練を強く批判し、中止を求めている。
 全会一致での可決は降下訓練に対する県民の強い危機感の表れである。米軍はそれを受け止めることができないほどに劣化している。そう断じるしかない。
 再度の訓練強行は、中部地区町村議会議長会が嘉手納基地での降下訓練に対する抗議決議を全会一致で可決した日だ。地元の声を無視するにも程がある。
 1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意で、降下訓練は伊江島補助飛行場で行うことが決まった。だが米軍は「例外的な措置」として、嘉手納基地での降下訓練を正当化している。常態化への布石であり、断じて認められない。
 例外を認めれば、合意は骨抜きになる。米軍機の騒音規制措置(騒音防止協定)に何ら実効性がないことからも明らかだ。日米合意の多くは米軍の運用を優先し、県民が被害を受ける構図である。日本政府はいつまで放置するのか。
 米軍は、2016年に伊江島で降下訓練が実施できなかった日が133日あったとしている。伊江島が降下訓練に適さないことの証しにほかならない。住宅密集地での降下訓練を避けるとの原点に立てば、嘉手納基地は選択肢ではない。米本国で実施すべきだ。
 米軍は夜間降下訓練について「日本政府と調整の上で実施した」とし、防衛局はそれを否定している。うそをついているのはどちらか。うやむやにしてはならない。