<社説>いのちの電話ピンチ 自殺者減へ関心広げよう


この記事を書いた人 琉球新報社

 「沖縄いのちの電話」のボランティア相談員が不足している。無償で、電話を通じて孤独や悩みを抱える人に寄り添い、自殺を防ぐという献身的な活動だ。目指してきた24時間体制は実現できず、現行の13時間体制も困難になっている。自殺者数は全国的に減少傾向にあるものの、2016年に県内で自ら命を絶った人は266人に上る。相談員が増えるよう、財政面も含めた各方面からの協力が求められる。

 「いのちの電話」は1953年に英国で始まり、日本では71年、東京に初めて開設された。現在、日本いのちの電話連盟に49センターが加盟しており、全国約60カ所で約6500人の相談員が活動している。沖縄は76年に全国で4カ所目という早い時期に始まり、41年の歴史がある。
 2016年の相談件数は9047件で前年より1147件減少した。相談員の減少が主な原因だ。時間的な負担に加えて精神的負担もあり、続けられない人が少なくないのである。多い時は約120人いた相談員が16年は実働95人にとどまり、午前10時から午後11時の対応時間帯に毎月40時間以上、相談員不在の時間が発生した。
 そこで、相談員を増やすために毎年6月から翌年3月まで養成講座を実施してきた。しかし、受講者は減っており、新規相談員が十数人という年もある。定年延長が広がりボランティアがしにくくなっているという指摘もあるが、原因ははっきりしない。
 相談員は主婦や元サラリーマンなど一般の人たちだ。専門家ではなく一人の人間として対等の立場で相談に応じる。原則月2回、1回2~3時間担当する。自殺志向ではない人なら15分程度だが、自殺志向の場合、20分以上かけて丁寧に対応する。相談員の顔ぶれが分かると相談しにくくなるため、相談員には匿名性も要求される。目に触れない社会貢献活動である。
 24時間体制にするには200人の相談員が必要だ。養成講座を担当する運営委員の渡久山朝裕県立看護大准教授は「自殺を予防し、社会貢献したいという人に頼るしかない。根気強くやっていく」と話している。
 沖縄は死亡者の中で自殺の率が高いというデータもあり、40代、50代の働き盛りの自殺が目立つ。社会全体の努力で自殺者を減らすために「沖縄いのちの電話」への関心を広げたい。