<社説>内閣支持率急落 1強のおごりへの批判だ


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 数に物を言わせた強引な国会運営への反発が数字に表れている。

 共同通信社が実施した全国世論調査によると、安倍内閣の支持率は44・9%で、前回5月から10・5ポイント下落した。
 今回の調査結果の特徴は「首相への信頼」を疑問視する世論が広がっていることだ。安倍政権は「丁寧に説明する」と言いながら、異論に耳を貸さない。今回の結果は「1強」のおごりに対する批判である。この事実を重く受け止めるべきだ。
 内閣不支持の理由で最も多かったのは「首相が信頼できない」の41・9%。同じ不支持理由は森友学園問題が話題となった4月調査で25・0%、5月調査で37・4%と上昇、今回40%台に跳ね上がった。政策判断ではなく、政権の体質が問題視されている。
 例えば、共謀罪法について反対が賛成を上回った。政府が十分説明しているかどうかについては「思わない」が81・3%に達した。法律に賛成した人ですら67・9%が「思わない」と回答した。
 監視社会や捜査権乱用につながるとして、慎重審議が求められたにもかかわらず、参院法務委員会の審議はわずか17時間50分だった。世論調査結果は当然だ。
 参院で共謀罪法を委員会採決を省いて本会議採決に持ち込んだ「中間報告」という異例の手続きにも批判が集まっている。67・7%が「よくなかった」と批判した。法案に賛成した人でも「よくなかった」が「よかった」を上回っている。議会政治を骨抜きにするやり方も安倍政権の体質として認識されている。
 安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画への対応も問題視されている。「行政がゆがめられた」とする前川喜平前文科事務次官の主張に対し、政府はゆがめられたことはないと反論した。この政府説明に「納得できない」としたのは73・8%に上っている。
 国家戦略特区の指定や獣医学部の新設認可について政府は「法令上何も問題ない」と強調してきた。問題は法令ではなく、認可の判断が公正・公平だったのかである。この点を野党に指摘されると首相は「印象操作」と猛反発。「総理の意向」「官邸の最高レベルが言っている」と記述された文書について、曖昧なまま参院を強引に幕引きした。こうした政権の体質が批判されている。
 通常国会は18日で閉会した。加計学園問題はなお多くの疑問が残る。首相が出席した閉会中審査が必要である。
 第2次安倍内閣以降、特定秘密保護法や安全保障関連法の強行採決によって支持率は大幅に落ち込んだが、その都度、外交や経済の「成果」を強調して回復させてきた。
 今回は共謀罪法を強行に成立させた結果、支持率が急落した。過去の「成功体験」はもう通用しない。