<社説>海兵隊不正確報告 航空機飛ばす資格ない


社会
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 米海兵隊の飛行隊が任務遂行に必要な整備ができているかなど、軍用機の「即応性」に関して不正確な報告をしていたとする調査結果を米国防総省の監察官がまとめた。9割の飛行隊長が機体の現状を正しく報告していなかったという驚くべき結果だ。

 調査はFA18戦闘攻撃機とCH53E大型輸送ヘリコプターを運用する10飛行隊を対象に実施した。調査対象には在日米軍基地所属の飛行隊は含まれていない。しかし普天間飛行場にはCH53Eヘリが2014年時点で8機配備されており、調査結果は人ごとでは済まされない。
 各飛行隊の隊長は上級部隊に対し、一定期間内に運用機の即応性について報告することが義務付けられている。しかし5割の飛行隊は任務遂行可能な機体数を水増ししていたほか、4割は機体の装備が十分なのかについて正しく報告していなかった。
 こうした不正確な報告について監察官は「任務をリスクにさらす可能性がある」と指摘している。この結果を裏付けるように、県内では近年、CH53Eヘリの事故が相次いで発生している。
 昨年10月には東村高江で不時着・炎上する事故を起こした。12月には緑ヶ丘保育園の屋根から同機の部品が見つかり、普天間第二小学校の運動場に重さ7・7キロの窓を落下させた。6月には久米島空港に緊急着陸し、1、2月には着陸装置が故障している。
 今年に入っても同機の事故は相次いでいる。3月には普天間所属機が被害総額200万ドル以上の重大な「クラスA」に分類される事故を起こしていた。しかし事故の詳細は明らかにされていない。
 4月には米カリフォルニア州で墜落し、乗員4人が死亡した。アフリカ東部のジブチでは着陸の際に機体を損傷する事故も起きている。
 なぜこれほどまでに事故が頻発しているのか。同機は1981年に海兵隊で導入されたが、飛行時間の増加やアフガニスタンなど戦地での任務に伴う老朽化、部品の枯渇などが生じている。後継機の開発が遅れているので、機種交代もできない。
 このため同機は海兵隊航空機の中で、整備と即応性で最も深刻な環境下にあると指摘されている。米メディアの中には、同機で飛行可能な機体はわずか37%と報じているところもある。
 任務遂行不能な機体を無理やり運用させているとしか思えない。だからこそ、隊長が任務遂行可能な機体数を水増ししたり、機体の装備が十分なのかについて正しく報告していないのだ。
 つまり退役すべき欠陥ヘリが沖縄上空を飛んでいる可能性が高い。地上で暮らす県民はたまったものではない。これ以上CH53Eヘリを沖縄で飛ばすことは許されない。危険な垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを含め、海兵隊に航空機を飛ばす資格はない。