<社説>玉城知事訪米要請 日米3者協議は不可欠だ


社会
この記事を書いた人 琉球新報社

 けんもほろろの対応は自国の軍隊が駐留する地域の住民に対する配慮がないだけでなく、当事者意識に欠けているとしか言いようがない。

 訪米中の玉城デニー知事はワシントンで国務省、国防総省の担当者と会談した。米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古の新基地建設に反対する意向を伝えると同時に、計画の見直しに向けた日米両政府と沖縄県による3者協議の場を設けるよう要望した。
 しかし米側は日本政府と示し合わせたかのように「辺野古が唯一の解決策」との見解を示し、3者協議についても明確な返答はなかった。さらに知事との面談後、国務省は「普天間飛行場の代替施設建設は揺るぎないコミットメント(約束)」との声明を出す念の入れようだった。知事の訴えに対し、ゼロ回答どころか、聞く耳を持たない姿勢を明確にした。
 一方、菅義偉官房長官も玉城知事が求める3者協議には是非を示さず、「辺野古移設は唯一の解決策だということに変わりはない」と従来の見解を繰り返した。
 日本政府は15日、辺野古の本格的な埋め立てに向け、約2カ月半ぶりにキャンプ・シュワブのゲートから工事車両による資材搬入を再開させた。埋め立てを既成事実にすることで、米国に向けても「辺野古が唯一」とアピールするかのようだ。
 米政府はこれまで、普天間移設を「日本の国内問題」と言い張ってきたが、今回は日本政府と共同歩調を取るように「辺野古唯一」を打ち出した。
 ただし、問題は駐留米軍の基地に関することだ。日米両政府で「沖縄の基地負担軽減」を何度もうたいながら、今でも「世界一危険な飛行場」を稼働させ、普天間よりもさらに機能が強化された新しい基地を美しい海を埋め立てて造ろうとしている。
 面談したナッパー国務副次官補代行は日本部長も務め、普天間問題の経緯を知る人物であるが、玉城知事に踏み込んだ発言はなかったようだ。
 外交、防衛は国の専権事項というのが日本政府の常套句(じょうとうく)である。しかし、戦後73年、米軍による事件事故に悩まされ、広大な土地を基地に奪われた逸失利益も生じた沖縄県に対して、米国が傍観者の立場を取り続けることは許されない。
 ましてや玉城知事は9月の知事選挙の最大の争点として辺野古新基地建設反対を訴え、過去最多となる39万票余りを獲得して当選した。辺野古新基地建設に対する県民の意志は明確だ。その民意を背負っての初訪米である。
 米国が民主主義国家の代表を標榜するならば、基地を置く地元の要求を無視し、対話を閉ざすことなどできないはずだ。
 米政府は当事者意識を持って沖縄県知事に相対してほしい。3者協議は不可欠だ。