辺野古補正評価書 政治的正当性欠いている


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 行政機関とは思えない姑息(こそく)さが際立つ。国民に不信任を突き付けられたばかりの政権による行為の正当性に重大な疑念が浮かぶ。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に向け、沖縄防衛局が突如、補正した環境影響評価書を県に提出した。衆院選の2日後、電話で突然連絡し、5分後に約20人の防衛局職員が県の担当課に押し寄せて評価書を置いていった。

 今後は、仲井真弘多知事に対する公有水面の埋め立て申請の提出に焦点は移る。沖縄の民意は県内移設拒否で一層強固になっており、翻意させることは困難だ。
 仲井真知事は政権交代が不可避だった衆院選をにらみ、自民党を主軸とする政権に交代した後も県外移設要求を転換させることはないと再三言い切ってきた。
 提出が既成事実化され、移設をごり押しする根拠とすることは許されない。自公連立政権が辺野古移設を推進すれば、沖縄の民意と正面衝突する局面が来るだろう。
 仲井真知事は「どうして民主党政権が今の段階で送ってくるのか」と疑念を呈したが、提出の問題性を端的に突いている。
 衆院選の自民党大勝を受けた安倍新政権は26日に発足する。自民党の政権公約は、県外移設を求める沖縄の候補者に配慮し、辺野古移設に一切言及していなかった。
 沖縄で当選した自民4氏の意向も踏まえ、新政権の軸足を定める協議は尽くされていない。政権交代を待たず、民主党政権が駆け込みで補正評価書を提出することは、法的に許容されても、政治的正当性が著しく欠けている。
 森本敏防衛相と気脈を通じ、自民党内に現政権下で厄介な手続きを済ませてほしいという深謀があるなら、民意無視という点において民主党政権と地続きになる。
 補正評価書は、地元の反発を呼んだ「(移設に際し)環境保全上、特段の支障はない」との文言を削除し、「最大限の環境保全措置を講じる」との表記に改めた。
 仲井真知事が「環境保全は不可能」と指摘したことを踏まえ、環境保全に支障はないと高をくくることができなくなったことの表れだ。だが、環境を守る実効性は総じて担保されておらず、新基地建設にお墨付きを与える“出来レース”に変わりはない。
 沖縄社会に背を向けた補正評価書は、政治、環境保全の両面で信頼に足るものではない。