米国務長官就任 普天間閉鎖へ指導力を


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 米上院議員を務めたジョン・ケリー氏が第68代の米国務長官に正式に就任した。2期目に入ったオバマ政権下で、課題が山積する米外交の舵(かじ)取り役を担う。

 沖縄にとっては、膠着(こうちゃく)状態にある普天間飛行場移設問題の行方が気掛かりだ。普天間問題を「日本の国内問題」などと片付けず、当事者の一人として沖縄の声に真剣に耳を傾け、指導力を発揮してほしい。
 ケリー氏はベトナム戦争を経験し、反戦活動にも関わった経歴を持つ。外交通として知られるが、対日政策を含めアジアに関する目立った発言はしていない。
 ただ、先月の上院外交委員会の指名承認公聴会では「中国との関係強化は米国にとって重要」と述べるなど、オバマ政権の外交戦略に沿ってアジア重視の姿勢を強めるものとみられる。
 今月に予定されている日米首脳会談に向けた事前調整で、日本の集団的自衛権行使容認への米側の支持表明について、米側が「中国を刺激する懸念がある」として難色を示した、と報じられている。
 米外交のしたたかさを見る思いだ。同時に、日本外交の浅薄さを感じざるを得ない。米国の歓心を買おうとした戦略が肩すかしを食らった感じで、長年の対米追従が招いた結果と言うべきだろう。
 米国もこのような外交感覚があるのなら、沖縄の基地問題も有益に解決できるはずだ。沖縄への過重な基地集中は周辺国との安全保障上も危険だし、日米関係全体にとっても決して得策ではない。
 米国は海兵隊の豪州駐留や在沖海兵隊のグアム移転などの再編計画を進めている。過度に沖縄を拠点化するより兵力を分散化するほうが機能的という判断だろう。
 そのことは同時に、沖縄の「地理的優位性」に絶対的な根拠がないことも示している。森本敏前防衛相の「軍事的に沖縄でなくてもよいが、政治的に沖縄が最適」、鳩山由紀夫元首相の「抑止力は方便」発言とも符合する。
 次期国防長官に指名されたヘーゲル元上院議員は上院軍事委員会の公聴会で、沖縄の基地負担軽減に取り組む姿勢を示したが、普天間の閉鎖、県内移設断念が一番の負担軽減策であることを、米国は知るべきだ。
 沖縄の「建白書」は日本政府だけなく、米政府へも突き付けられている。「論より証拠」をきちんと示してもらいたい。