鳩山氏講演 対米追従の内幕開示を


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 鳩山由紀夫元首相は宜野湾市内で講演し、米軍普天間飛行場返還・移設問題で「最低でも県外」を掲げながら実現できなかったことをわびるとともに、あらためて問題解決に尽力したいとの意向を示した。併せて持論である東アジア共同体構想の実現に向けた研究所を3月にも設立し、沖縄事務所も開設すると明らかにした。

 中韓を交えたアジア共同体は、オバマ米政権から「米国排除」だとして強い反発を招いたが、ノーベル平和賞を受賞した欧州連合(EU)のアジア版を目指す意義は大きい。「東アジアを友愛の海にする」との理念を共有したい。
 講演や会見では、普天間の名護市辺野古移設に固執する外務・防衛官僚、首相に面従腹背する関係閣僚、首相に非協力的な大多数の国会議員の姿を浮き彫りにした。
 鳩山氏は在沖米海兵隊について「抑止力は方便」と発言したが、講演では重ねて抑止力論を否定。沖縄駐留の根拠とされる地理的優位性についても「政府が国民に納得させる政治的手段」と断じた。
 県外移設を拒む政界や官僚機構の背後に潜むのは沖縄差別だ。「抑止力」「地政学上」の虚構性を突き崩す必要性を痛感する。
 講演後の記者会見で鳩山氏は、普天間移設に向け、ヘリを搭載する輸送船を数隻建造し、海兵隊がローテーション展開することで、実質的な県外移設を実現する案を検討していたことを明らかにした。さらに当時の北沢俊美防衛相に日米防衛首脳会談で同案を打診するよう求めたが、米側に伝えられなかったという。首相へ反旗を翻すにも等しい行為であり、これほどまで政権の体をなしていなかったのかとあきれるほかない。
 鳩山氏の首相当時の指導力の欠如は非難されてしかるべきだ。ただ、米側のジャパン・ハンドラーの意向を忖度(そんたく)する、対米追従の日本外交の在り方こそが本質的な問題であり、そのことが厳しく問われるべきだ。
 講演で鳩山氏は「力不足」をわびたが、本心ならば、普天間問題をめぐり、鳩山政権で何があったのか全て明らかにすべきだ。
 当時の岡田克也外相が嘉手納統合論を持ち出すなどした閣内不一致の背景や県外移設を頓挫させた経緯をつまびらかにしてもらいたい。沖縄への構造的差別や、いびつな日米関係を顕在化させた政治家の責任を肝に銘じてほしい。

鳩山由紀夫元首相講演動画・前半
鳩山由紀夫元首相講演動画・後半
鳩山由紀夫元首相鼎談動画前半
鳩山由紀夫元首相鼎談動画後半