菅官房長官来県 「対米卑屈」を拒否する


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 何度来ても答えは変わらないのになぜやって来るのか。

 米軍普天間飛行場の移設をめぐり、安倍晋三首相をはじめ、外務、防衛、沖縄担当の閣僚の来県が相次いでいる。3日には政権ナンバー2の菅義偉官房長官が来県し、仲井真弘多知事と会談した。
 菅官房長官は「皆さんの声に耳を傾ける」と低姿勢を示しながら、「行うべき点(辺野古移設)は前に進めていきたい」と述べた。
 日本政府が、名護市辺野古以外の選択肢を検討する気がないことを表明したようなものだ。異例の「地元マスコミ行脚」までしたのは、丁寧に対応し移設問題が前進しているかのように見せる演出と言わざるを得ない。
 4月28日の「主権回復の日」式典について菅氏は「沖縄を含めたわが国の未来を切り開いていく決意を新たにする」と述べ、仲井真知事の出席を求めた。
 しかし、1952年のサンフランシスコ講和条約発効によって、沖縄は米軍基地を負担させられ、塗炭の苦しみが始まった。その「屈辱の日」をどうやって祝えよう。
 それに県民の総意を無視して辺野古移設を強行しようとしておきながら、沖縄にどのような「未来」を「切り開け」というのか。
 例えば、70年に外務省が作成した文書「沖縄復帰準備をめぐる対米交渉について」はこう記述している。
 「今後長期にわたり沖縄基地を中心とする米国の抑止力に依存する」ことが「日本の安全保障の真の利益」。そして万事、米国の納得の上で対沖縄政策を進めることは「対米卑屈ではなく、日米協力のあるべき姿」と開き直っている。これが「主権を回復」したと胸を張る「わが国」の姿だ。
 安倍政権は辺野古移設を進めるために国会議員を沖縄に常駐させる案を検討している。兵を引き連れ首里城に乗り込み力ずくで「琉球藩廃止、沖縄県設置」を宣言した松田道之・琉球処分官をほうふつさせる。
 安倍首相がオバマ米大統領と交わした約束を守るため、現代の「処分官」を送ろうというのか。復帰前から連綿と続く「対米卑屈」ぶりは言語道断だ。
 沖縄の尊厳を踏みにじり自己決定権を奪う政治はこりごりだ。普天間飛行場の閉鎖と県外移設、オスプレイ撤去の覚悟ができたときこそ閣僚来県に意味がある。