反対説得に報労金 血税で裏工作するのか


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 米軍制限水域の漁業補償に反対する人を「有力者」が説得した場合、「有力者」に土産品や報労金を公金で支払えるとの規定を防衛省が設けていたことが明らかになった。米軍基地駐留に異議を唱える住民を懐柔し、協力者にするため札束をちらつかせる行為にしか見えない。税金の使い方としてはあまりに品がない。識者が「公平性の面からみて財政民主主義に反する」と指摘するのもうなずける。

 支払いの根拠になっているのは地方協力局長が各地方防衛局長に宛てた「漁業補償等処理事務費の執行について(通知)」と題する内部文書だ。漁業補償に関する立て替え払いができる経費としてこう記している。
 「有力者等が一部の反対者等を説得するために行う説明会会場借り上げ料」「説明会における食事代または茶菓代」「一部の反対者等の説得に尽力した有力者等に対する土産品の購入に要する費用または報労金」などとある。極めて露骨だ。基地反対の声を封じるための裏金と言われても仕方ない。
 沖縄防衛局は「局として、これまでに支払った実績はない」と説明しているが、省内で規定を設けていること自体、違和感を覚える。こうした支出は省内の内規(訓令)に基づいた予算措置で対応するとしているが、法的根拠はないという。国の方針に合致する勢力だけに公金が支出される仕組みが公平・公正と言えるのだろうか。
 このほか、漁協が制限水域設定のために開く総会の開催費用や出席者の日当の公金支払いも規定で認めている。米軍普天間飛行場の辺野古移設に関する公有水面埋め立て申請に同意した3月22日の名護市漁協の総会で、防衛局が会場借り上げ費とバス借用料の計32万8千円を支払っている。
 辺野古移設の是非を争った1997年の市民投票でも、防衛局の前身である那覇防衛施設局は職員を動員して戸別訪問するなど組織的な介入をした。また昨年には宜野湾市長選で防衛局長が職員に投票を促す講話をしたり、有権者のいる職員リストの作成を黙認したりしていた。政治的な行動があまりに多い。
 防衛省は県知事、県内全市町村長、県議会、全市町村議会が辺野古移設に反対の意思を示している民意をこそ受け止めるべきで、国民が納めた血税で裏工作するなど浅はかだと悟るべきだ。