汚染水国費投入 「東電任せ」のツケ残すな


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 東京電力福島第1原発の汚染水漏えい問題に対処するため、政府は470億円の国費を投じて総合的対策を講じることを決めた。

 安倍首相は「東電任せにせず、政府が前面に立ち、解決に当たる」と強調した。しかし、今回の政府の対策も漏えいをすぐに食い止める有効策は見当たらず、根本的な解決につながるのかは不透明だ。
 政府の対策は、陸側から原子炉建屋に流れ込む地下水を遮る凍土遮水壁の設置と汚染水の浄化設備の増強が柱だ。だが、技術的にも実効性は不確かで、実現したとしても数年の時間を要する中期的な対策だ。
 対策ではまた、汚染水漏れを引き起こしている「フランジ型」のタンク約300基全てを、より信頼性の高い溶接型に切り替える。しかし、溶接型設置には1基で1カ月以上かかるとされ、フランジ型でのさらなる汚染水漏れのリスクを抱えながらの作業となる。
 そもそも、鋼板の接合部分をボルトで締めるフランジ型は当初から危険性が指摘されていた。しかし、東電は低コストで工期も短い同型の増設を重ねてきた。
 汚染水対策を急ぐ事情もあっただろうが、東電はここでも判断ミスをし、その場しのぎの対策を繰り返したことになる。全ての情報を東電が握り、隠蔽(いんぺい)的な体質と感覚で対策を進めてきた結果だ。
 東電の事故収束作業が行き詰まっていることは早くから見えていた。安倍政権は原発再稼働や原発輸出に熱心な半面、事故収束への対応は最優先課題として取り組んでこなかったのではないか。
 今回の対策も2020年夏季五輪の東京誘致に汚染水問題が影を落としていることを懸念し、慌てて政府の取り組む姿勢をアピールしているようにも見える。政府までが姑息(こそく)な対応になっては国内外の世論の信頼は得られない。
 抜本的な対策を打ち出すのなら、東電の破綻処理も真剣に検討すべき時期だ。汚染水対策への国費投入には「東電に返還させるか、破綻処理させて政府が全責任を負うのか、どちらかしかない。納税者にツケが回るのはおかしい」(河野太郎衆院議員)との批判も出ている。
 福島第1原発は廃炉に向け、汚染水だけでなく使用済み核燃料の処理など多くの難題が横たわる。事故対策費や賠償金が膨らむのは確実だ。問題の先送りはより大きなツケを生むことになる。