陸自秘密情報部隊 憲法否定の暴走許されぬ

 軍事に対し、政治が優越するという民主主義国家の大原則である文民統制(シビリアンコントロール)を、根幹から覆しかねない衝撃的な事実が発覚した。

 陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)が、首相や防衛相に知らせず、冷戦時代から独断で海外に拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせていたことが分かった。5年半にわたる共同通信の取材に対し、陸自トップの陸上幕僚長経験者ら複数の関係者が証言した。
 国民から選ばれた政治家が自衛隊を統制する文民統制は、先の大戦で軍部が暴走した反省に立つものだ。憲法は首相と国務大臣は文民と規定する。自衛隊最高指揮官の首相の指示もなく、国会のチェックもない別班の海外活動は、民主国家と憲法を真っ向から否定することにほかならない。自衛隊の暴走は罪深く断じて許されない。
 防衛省と陸自は別班の存在を認めていないが、国民を二重に欺く背信行為だ。安倍政権と国会は別班の実態について徹底的に調査し国民に明らかにする義務がある。
 関係者の証言を総合すると、別班のメンバーは数十人いて、全員が陸自小平学校の「心理戦防護課程」の修了者だ。同課程は、旧陸軍のスパイ養成機関「中野学校」の後継とされる。中野学校出身者は沖縄戦でも、氏名や身分を偽って住民監視やゲリラ戦準備などの役割を担った。
 別班の海外展開は冷戦時代に始まり、主に旧ソ連、中国、北朝鮮に関する情報収集を目的に、国や都市を変えながら常時3カ所程度の拠点を維持。最近はロシアや韓国などで活動しているという。
 陸幕長経験者は「万が一の事態が発生した時、責任を問われないよう(詳しく)聞かなかった」としたが、別班が非合法なスパイ活動にも手を染めている実態をうかがわせる。別班を放置すれば、国民のあずかり知らぬところで情報を独占し暗躍する“闇の権力”を認めることになる。容認できるはずがない。
 安倍政権が成立に血まなこになる特定秘密保護法案では、別班のような存在は永久に闇に葬られかねず、共同通信の記者や証言した防衛省関係者は罪に問われかねない。別班の存在は、秘密保護法の危険性や欠陥も浮き彫りにした。独裁的な強権政治への扉を開きつつあるとの警鐘と受け止めたい。