人口推計 若年層の不安解消を急げ


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 劣悪な労働環境を生みだそうとしながら、他方で働き手を確保しようとする。政府が進めようとする施策はあまりにちぐはぐだ。

 総務省が発表した2013年10月時点の人口推計で、日本の総人口は21万7千人減、中でも生産年齢人口は116万5千人も減った。
安倍晋三首相は働き手不足による経済減速を懸念し、介護などの分野での外国人労働者受け入れ検討を指示した。
 一方で、「アベノミクス」の経済成長戦略の中身である「日本産業再興プラン」では「雇用制度改革」を打ち出している。規制改革会議の審議では、従業員を解雇しやすい「特区」や「限定社員制度」を設け、不当解雇も職場復帰でなく金銭で解決できるようにと狙う。日雇い派遣を復活し、無期限派遣も全業種に拡大しようとし、残業代を支払わなくてよい「ホワイトカラー・エグゼンプション」を設けることも検討する。
 働き手を確保したいなら、労働環境を逆に改善するのが筋ではないか。経済の減速を懸念するなら、旺盛な消費需要を抱える若年の子育て世帯の所得をむしろ確保すべきだ。若年層に派遣など不安定労働を強いる「雇用改革」路線を反転させ、所得分配を若年層に手厚くする方向を志向すべきだ。
 不安定雇用は必然的に将来への不安を生む。将来が不安なら消費より貯蓄を志向するのは必然だ。消費を促す意味でも、雇用の改悪傾向は逆転すべきなのである。
 確かに、人口の増減は経済成長に大きな影響を与える。R・F・ハロッドは、人口、中でも生産年齢人口の増加率が低いと、現実成長率を制約し、不況の局面が多い社会を招くと説いた。
 その意味で、人口減を少しでも緩和しようとするのは当然だ。だが外国人労働者の安易な受け入れには疑問が湧く。今の論議は、受け入れた外国人を労働者としてのみ想定しているように見える。だがそうして受け入れた人もいずれは老いる。社会保障制度の対象となることを想定しなければいけない。使い捨ての、劣悪な労働条件を強いる相手として考えるべきではない。
 遠回りなようでも出生者数増を促す政策こそが求められる。女性の就労への手厚い支援により若年世帯の収入増を図るのも有効だろう。保育や介護サービスの充実も図り、多様な働き方を確保することが、少子化の歯止めにもなる。