こどもの日 格差なき学びに公助充実を


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 きょうは「こどもの日」である。子どもたちの人格を重んじ、幸福を図ることを掲げ、戦後に設けられた。その理念をかみしめ、今の世代がなすべきことを考えたい。

 子どもに関わる時には、子どもにとって最良のことは何かを考える責務がある-。日本を含む約200の国・地域が加わる子どもの権利条約は「子どもの最善の利益」という原則を強調している。
 だが、県内の児童生徒をめぐり、「最善の利益」が追求されているとは言い難い現実が横たわる。
 経済的な厳しさから就学困難と認定され、学用品費などの援助を受けた県内小中学生が2012年度は前年度から1161人増え、2万8055人と最多を記録した。全児童生徒に占める割合は19・26%に上り、ほぼ5人に1人に上る。
 就学支援を受ける生徒の中には、学びたくても学べず、進学できない子がいる。同級生の多くが進学する中、経済的理由で諦める生徒の心の痛みは察するに余りある。
 特に高校進学を断念すると、仕事が見つからなかったり、低収入にあえいだりするケースが多い。親の困窮が子に及ぶ「貧困の連鎖」を断ち切るためには、就学・就職支援を共助と公助の両面で強化する必要がある。
 こうした中、生活困窮世帯の子の学習を支援し、高校進学につなげる動きが広がっていることを評価したい。行政とNPO法人などが連携した学習支援は7市3町に拡充している。
 名桜大学と名護市が連携し、学生ボランティアが生活困窮世帯の中学生に勉強を教える活動では、2013年度に継続参加した15人中、14人が高校に合格した。
 沖縄大学は児童養護施設や里親家庭の高校生を対象に、学費を免除する奨学制度を創設し、県指定自動車学校協会は運転免許を取る費用の一部免除を始めた。
 児童養護施設退所後の子どもたちの進学や就職を、賛同者の寄付で支える県内のNPO法人「にじのはしファンド」の活動も、助け合いの機運を醸成している。
 「肝ぐりさん(痛みを分かち合う)」の心で沖縄の未来を開く子どもたちを後押しするには、より一層の行政の関わりが必要だろう。
 県や市町村は使途の自由度が高い一括交付金などを活用して、さらなる公助充実に向けた知恵をひねり出してほしい。