<社説>軍港機能把握 この国は「主権在官」か


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 この国の主権者は一体誰なのか。「主権在官」。沖縄の基地問題をめぐる国の果てしなき隠蔽(いんぺい)体質にそんな言葉さえ浮かぶ。

 安倍政権が名護市辺野古沖で強権的に建設を進めている米軍普天間飛行場の代替新基地をめぐり、新たな情報隠しとともに軍港機能強化の懸念があぶり出された。
 日本政府は2009年の段階で、新基地に造られる岸壁に米軍の高速輸送船が配備される計画を知りながら、隠していたことが濃厚になった。
 内部告発サイト「ウィキリークス」が09年10月に駐日米大使館が発した公電を公表しており、日米のやりとりが記されていた。
 それによると、防衛省幹部が米軍の新たな配備や作戦計画の変更を伴う場合は新基地の機能に反映させるべきだと進言した上で、その例として「高速輸送船やMV22(オスプレイ)の配備」を挙げている。日本側が米軍の新装備を既に把握していたことになる。
 県民の圧倒的多数が反対する辺野古新基地の核心的な機能について、日本政府が伏せ続けた事実が米側の公文書で明るみに出ることが繰り返されてきた。今回も日本政府のごまかしが露見した。
 政府が扱う情報は主権者である国民のものだ。県民の反発を招く都合の悪い情報を恣意(しい)的に防衛官僚が隠すことは許されない。
 情報隠しの節目に何度も登場するこの防衛官僚は防衛政策局長などを歴任した高見沢将林氏だ。1996年には、オスプレイが2003年ごろに沖縄に配備予定とする文書を提出していた。
 さらに普天間飛行場の県外移設を公約に掲げた民主党政権が09年9月に誕生した直後、米政府高官に「米側が早期に柔軟さを見せるべきではない」と進言し、県外つぶしを図っていた。外交上の利敵行為に等しい暗躍ぶりだ。
 在沖米海兵隊が頻繁に使う高速輸送船は千人の兵士や300トン以上の物資を積み、グアムと沖縄間をわずか35時間で結び、海兵隊の機動力を格段に高めたと評価されている。
 オスプレイが離着陸するV字滑走路に加え、強襲揚陸艦や高速輸送船が接岸できる270メートルの岸壁が築かれる辺野古新基地は、海、空の輸送能力が集中する海兵隊の一大拠点になりかねない。
 防衛省は「軍港機能はない」と言い張るが、県民の懸念を打ち消す根拠は何も示していない。