<社説>産経新聞記者起訴 朴政権は過去から学べ

 韓国の朴槿恵大統領の動静に関する記事が朴氏の名誉を毀損したとして、ソウル中央地検は産経新聞の前ソウル支局長を在宅起訴した。

 韓国国民はかつて軍事独裁政権の圧政に苦しんだ時期があった。民主化、経済発展を成し遂げ、自由と民主主義の重さを韓国は身をもって知っているはずだ。
 南北分断を背景に表現の自由が完全に保障されていないとはいえ、政権批判を力で押さえ込むことが民主主義を掲げる国で本当に許されるのか。国際社会の厳しい目が注がれていることを朴政権は知るべきだ。
 問題になった記事は、旅客船沈没事故が起きた4月16日、朴氏には7時間にわたり所在が確認されない時間帯があり、朝鮮日報のコラムなどを引用し、朴氏がその時間帯に特定の男性と会っていたのではとのうわさを紹介する内容だ。
 「低俗」「国家元首に対する侮辱」などの批判もあるが、重大事故が起きた時の政権トップの所在や動静は国民の関心事であり、事故対応によっては政権の責任問題にも発展する。
 メディアにはそれを伝える義務があり、気に入らない記事を書いただけで在宅起訴となると、国家権力の乱用と言わざるを得ない。
 産経新聞は韓国内では「嫌韓」のイメージで語られ、日頃の朴政権に対する批判的報道への不満も背景にあるのではという指摘がある。現に産経新聞が引用した朝鮮日報は立件されていない。
 しかし、事は政権に批判的な海外メディアを処罰したということだけでは済まない。韓国では捜査当局が無料通信アプリのチャット記録を捜査名目で押収する事例が急増しており、国民監視への不安感が広がっている。
 次の標的は自分自身になりかねないという認識で、韓国メディアは自らの問題として朴政権の判断の誤りを批判し、起訴取り下げを主張してもらいたい。
 日韓の関係修復にブレーキがかかり、「嫌韓」の動きが広がらないか懸念もある。しかし、この件をもっていたずらに韓国批判を強めるのは筋違いだ。
 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が発表した2014年の「報道の自由度」の報告書では、特定秘密保護法成立などで日本は57位の韓国より下の59位だ。言論の自由への取り組みは日本にも求められていることを認識したい。