<社説>米兵ひき逃げ 地位協定を改定すべきだ


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 沖縄市でバイクを運転していた男性が転倒し意識不明の重体となっていた件で、県警が米海兵隊少佐によるひき逃げ事件と断定した。断じて許されない事件だ。

 「少佐という指導的立場にある者がひき逃げという卑劣な行為をした」(桑江朝千夫沖縄市長)という点でも事件は深刻だ。何度も指摘してきたが、米軍の綱紀粛正、事件・事故の再発防止策は一体どうなっているのか。本当に実効性があるのか。多くの県民は怒りと同時に、あきれ返っているのではないか。
 県警によると、容疑者は任意の事情聴取に「怖くなって逃げた」と供述し、関与を認めている。県警は逃亡の恐れはないと判断し、米軍に身柄の引き渡しは求めない方針だというが、疑問が残る。独立国として本来、自国の捜査機関が身柄を拘束して取り調べるべき案件であることは明らかだ。
 容疑者は米軍憲兵隊の監視下にあるというが、証拠隠滅などの恐れはないのか。過去の米軍事件・事故で、基地内に逃げ込んだ容疑者が本国に逃走する事例が繰り返された苦い歴史もある。
 日本側が先に拘束した場合を除き、起訴前は原則的に米側に身柄が委ねられるという現在の日米地位協定はどう考えてもおかしい。
 10日に就任した翁長雄志知事は事件を受けて地位協定の在り方に言及し「抜本的に解決しないといけない」と改定に向けて取り組む考えを示した。当然だろう。
 来年は戦後70年だ。在日米軍の特権的な身分を保障した不平等な協定を今後も継続し、従属的でゆがんだ日米関係を続けるのか。衆院選の各候補も今回の事件を重く受け止め、ぜひ地位協定改定への取り組みを誓ってもらいたい。
 事件では飲酒は確認されていない。ただ早朝という発生時間や逃走の事実から見てその可能性も疑うべきだ。ひき逃げに係る道交法違反などの容疑が掛かっているが、地位協定の壁にも阻まれ、飲酒絡みの容疑は最初から立証不可能となった形で、この点は看過できない。「逃げ得」が許されていいはずがない。
 米軍は9日から在沖米兵の飲酒制限を大幅緩和したが、11月下旬に緩和を発表してからも飲酒絡みの事件・事故が相次ぐ。組織の中に、地位協定に基づく特権意識が潜んではいまいか。一連の事件・事故を痛切に反省しない限り、「良き隣人」を語るべきではない。