<社説>ハラル生産出資 イスラム圏へ「沖縄」発信を


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 世界で約16億人、東南アジア(ASEAN10カ国)で約2億8千万人といわれるイスラム教徒に対し、沖縄観光を売り込む材料になると期待したい。

 琉球銀行などが設立した「りゅうぎん6次産業化ファンド投資事業有限責任組合」が、ハラル食の製造を目指す「食のかけはしカンパニー」に8500万円を出資する。
 「ハラル」はイスラム法で合法とされる食事や化粧品、サービスなどを呼ぶ。食事はイスラム教で摂取が禁じられる豚肉やアルコールを含んでいないか、認証機関が厳しく審査する。
 イスラム圏からの観光客を呼び込む鍵が、そのハラル食を提供できるかどうかにある。
 食のかけはしカンパニーは来年1月に工場建設に着手し、8月から生産開始予定だ。原料の農産物は、2~3割は県産品で賄う。
 沖縄を含め日本はハラル食を提供できる施設が限定される。大規模生産できれば、イスラム圏で沖縄の認知度向上に向け積極的に情報発信できる。具体的に沖縄をどう売り込むか、次の戦略も問われる。
 昨年、「和食」が無形文化遺産に登録された。イスラム圏の中で、多くの日本製品はブランドとしての価値を持つ。沖縄の長寿のイメージも利用しない手はない。
 ハラル食をマレーシアやシンガポールなど経済発展を遂げるイスラム圏へ輸出すれば、沖縄農業にとって新たな需要開拓にもなる。
 台湾ではことし2月、ドバイに本社のあるエミレーツ航空の台北路線就航に伴い、イスラム教徒の旅客獲得に向けた活動が一気に熱を帯び、ハラル認証申請が急増した。
 アクセス確保は欠かせない。東南アジアの中で、沖縄をどうハブ(中心)にするかという策も必要だ。
 2014年の入域観光客は、初の700万人到達の見通しとなった。11月までに外国人観光客は61・1%増の82万8800人で過去最高を記録した。
 イスラム圏域からの入域客の裾野(すその)を広げるには、さらなるハラル対応の取り組みが求められるが、設備投資は中小業者にとっては重荷だ。行政の支援も求められる。
 2020年には東京五輪がやってくる。イスラム圏からも大勢の観光客が来る。ハラル対応は沖縄が日本をけん引する意気込みで取り組み、官民挙げて沖縄の国際観光地形成を目指したい。