<社説>’14回顧 基地問題 強権政治に異議申し立て


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 県民が切願する過重な基地負担の軽減とは逆行するかのように、安倍政権による基地押し付けの圧力が一段と強まった1年だった。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設が最大の争点となった1月の名護市長選、11月の県知事選、12月の衆院選でことごとく「ノー」の民意が示されたにもかかわらず、安倍政権は移設強行の姿勢を崩していない。
 こうした理不尽を許す背景にあるのは、沖縄への民主主義の適用を拒む二重基準であり、すなわち構造的差別にほかならない。基地問題を通して、根深い差別構造がより顕在化し、県民の異議申し立てが繰り返された年だった。
 安倍政権の基地問題への対応を表現すれば、「見切り発車」と「空手形」に象徴されようか。8月には、辺野古への新基地建設に向けた海底掘削調査に着手。抗議行動での強制排除など、民意を踏みにじる強権政治をあらわにした。
 一方で普天間の5年以内の運用停止については、茶番劇が繰り広げられた。菅義偉官房長官は2019年2月までの実現を目指す方針を表明したが、米政府は「空想のような見通し」と反対した。知事選を控え、県民を懐柔したいがための口約束だった疑いが濃厚だ。
 10月にはオスプレイの普天間配備から2年を迎えたが、夜間飛行は常態化し、本土への訓練分散も一向に進んでいない。普天間の負担軽減は急務であり、安倍政権は知事の交代を理由に、5年以内の運用停止をほごにしてはならない。
 東村高江でも地域住民の反対を無視して、米軍ヘリ着陸帯の建設計画が進む。貴重な自然と生活環境に多大な影響を及ぼす点で辺野古と何ら変わりはない。日米両政府は新たな負担を押し付ける新基地建設計画を即刻中止すべきだ。
 陸上自衛隊の与那国島配備も見切り発車以外の何物でもない。政府は4月に施設建設の起工式を開いたが、町民は賛否で二分されたままだ。早期に住民投票を実施して町民の明確な意思を確認するのが先決だ。
 安倍政権の強権的体質は強まるばかりだが、海外や国内の識者が沖縄に目を向け始めたことは心強い限りだ。1月には普天間の即時返還と新基地建設反対に賛同する海外識者ら呼び掛け人が100人を超えた。ノーベル賞受賞者ら幅広い分野で影響力を有する人々だ。圧力に屈することなく、国内外の良識派との連帯を深めていきたい。