<社説>阪神大震災20年 平時に備える重要性共有を


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 きょう1月17日で住民6434人の犠牲者を出した阪神・淡路大震災から20年がたった。大きな節目を機に、震災の教訓を後世に引き継ぎ、人々の生命、財産を守り、安心安全に暮らせる社会の実現に努力することを確認したい。

 阪神・淡路大震災は近代都市が直下型地震に見舞われた国内初の事例だ。高速道路の倒壊などで安全神話が覆され、戦後半世紀を迎えた日本社会を根底から揺さぶる出来事となった。犠牲者の大半が家屋の瞬時倒壊や家具転倒による圧迫死だった。建物が壊れて凶器となり、避難者数の増大や救助活動の妨げに直結することを浮き彫りにした。建物の耐震化の必要性が叫ばれる契機になったのは当然のことだろう。
 2012年末時点で地方自治体が所有する役所や学校、病院など全国の公共施設の耐震化率は82・9%にとどまる。県内は公立小中高校が78・2%で全国平均より6・1ポイント低く、県庁や市役所、警察署などの庁舎は63・7%で全国より6・7ポイント下回っている。病院は76・5%で全国を0・4ポイント上回り、全国水準を維持した。全体としては取り組みが遅れており、耐震化をさらに進める必要がある。
 昨年3月に琉球新報が実施した県内41市町村アンケートでは11年の東日本大震災を受けてようやく7割の市町村が防災計画を見直し、うち8割が津波の到着範囲などの想定を拡大した。一方で水・食料の備蓄量が目標値に到達しているのは4町村にすぎず、町村部では自主防災組織の整備が進んでいないことが浮かんだ。県内で防災・減災の備えが尽くされているとは言い難い。
 県は昨年5月、本島南東沖3カ所を震源とする地震が連動した場合の被害想定を発表した。最大規模はマグニチュード9・0で、死者1万1340人、負傷者11万6415人、建物全壊5万8346棟と想定した。沖縄では巨大地震は起こらないとの固定観念を捨てる必要がある。
 05年に兵庫県で開催された国連防災世界会議では、津波や地震など自然災害による被害を減らす国際的な防災行動計画「兵庫行動枠組」が示された。ことし3月に仙台市で開催される世界会議では東日本大震災を踏まえた新指針をまとめる。この機会に、行政だけでなく、家庭や地域、学校、職場などでも地震に対する平時からの備えが重要との認識を共有したい。