<社説>テント撤去要求 国がすべきは辺野古撤回だ


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 沖縄防衛局と沖縄総合事務局北部国道事務所が名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前で座り込みをしている市民のテントなどの撤去を求める文書を出した。テントは普天間飛行場の移設に伴う新基地建設に反対の意思を示す市民の拠点となっている。撤去要求は移設に反対する取り組みを封じる狙いがあり、表現の自由を侵害する危険な事態と言わざるを得ない。

 東村高江の米軍北部訓練場の新設N4のゲート前にあった反対住民らのテントが何者かによって撤去された。しかもテントの一部は基地内に捨てられていた。辺野古と高江では基地に反対する市民への弾圧が露骨な形で強まっている。暗黒社会へと進む動きを見過ごすことはできない。
 辺野古のテントは国道の歩道に設置されているが、通行を妨げる状態にはなっていない。一方でゲート前の歩道部分には防衛局が山形の突起がある鉄板を設置している。北部国道事務所が設置許可を出しているが、昨年8月に現地を訪れた副所長は鉄板が「危険だ」との認識を示し、防衛局に安全対策を指導していると説明していた。
 しかし鉄板は現在もそのままの状態で置かれている。危険と認識した鉄板をそのまま放置しておきながら、テントだけ撤去を求めるのは道理に合わない。
 琉球新報が昨年8月に実施した世論調査では普天間飛行場の県外・国外移設や無条件閉鎖・撤去を求める意見は79・7%に達し、着手された移設作業について「中止すべきだ」との回答は80・2%に上った。
 昨年の名護市長選、県知事選、衆院選の4選挙区全てで辺野古移設反対を公約に掲げた候補者が当選している。沖縄の民意は辺野古移設に「ノー」を突き付けている。
 それなのに政府は海上での移設作業を強行し続けている。沖縄の声に耳を傾けることなく、さらに意思表示の拠点を奪おうとする行為が民主主義社会で許されるはずがない。
 これ以上、沖縄の民意を踏みにじることは許されない。国がすべきはテントの撤去要求ではないはずだ。
 直ちに海上での作業を中止し、辺野古への新基地建設計画を撤回することだ。計画が撤回されれば、おのずとゲート前での座り込みもなくなり、テントも撤去されるだろう。