<社説>辺野古基金 民主主義を守る試み 平和の世論を喚起したい

 辺野古新基地をはじめ沖縄での米軍基地建設がなぜ問題なのか、国際的には理解がまだまだ浸透していない。沖縄にとって、その周知は何より優先する課題だ。

 その意味で誠に意義深い。普天間飛行場の辺野古移設に反対する沖縄の民意を国内外に発信しようと辺野古基金が創設された。
 これで新基地反対運動は新たな次元に入ったといっていい。国内外への影響という点で沖縄の戦後史の中でも特筆すべき試みである。関係者に敬意を表する。全国も巻き込んで基金を大きく育て、揺るぎない民意を発信したい。

「盟主」に伝達

 基金の設立会見で呉屋守将共同代表はこう述べた。「昨年の一連の選挙で何度も明確に示した県民の意思に、安倍政権は全く耳を貸そうとしない。(その姿を)『民主主義の盟主』を標榜(ひょうぼう)する米国政府と米国民に直接訴えたい」。まさにその作業が重要なのだ。
 やるべきことは無数にある。米国、中でもワシントンDCで講演会やシンポジウムを開き、基地に苦しんだ沖縄の戦後史、日本政府によって民意をないがしろにされている現実を、知事らが切々と訴えるのは効果があろう。米国の有力紙への意見広告もいい。市民運動だけでなく、れっきとした地方政府の代表者たる知事も含めて訴えるのはインパクトが違う。
 もちろん米政府への直接の訴えも必要だ。米国ではシンクタンクに籍を置く人が政府に入ることが多い。次期政権を見据えてシンクタンクを行脚するのもいい。
 翁長雄志知事は5月後半に訪米の予定だが、無論1回で済むはずがない。今回はともかく、将来は国連での訴えも検討すべきだ。
 これらを賄うには相当な費用がいる。その費用を県予算だけで賄うのは難しい。民間ベースでの基金設立だが、知事が「頼もしい。同じ目標に向かい頑張る基礎ができた」と喜んだのもうなずける。
 国内でもまだ「沖縄は基地で食べている」といった誤解は多い。基金を使い、全国行脚でこうした誤解を払拭(ふっしょく)するのも必要だろう。
 基金の効用は、こうした周知活動を資金面で支えるのにとどまらない。重要なのは、基金自体が国内世論を喚起する点だ。
 石原慎太郎元東京都知事が提起した尖閣諸島買い取り基金は、賛同者から資金を集めたばかりでなく、国粋主義的ナショナリズムを喚起した。辺野古基金は新基地建設にとどまらず、石原氏の志向とは正反対の、平和を求める国民世論を喚起することになろう。まさに「日本の平和と民主主義を守るための基金」(呉屋氏)となる。

裾野の広さ

 集団的自衛権行使容認や武器輸出解禁など安倍政権の軍事前のめりへの懸念が強いのは世論調査にも表れている。知事が述べたように、沖縄の民意を支える国民世論の裾野(すその)は広い。基金はその世論を可視化する効果もあるはずだ。
 新基地建設を止める決定を県が下した場合、政府が「今まで工事にかかった費用を賠償せよ」と県を提訴するのでは、と取り沙汰されている。基金創設は、訴訟を含め政府がいかなる妨害をしようとも、沖縄は新基地建設阻止を取り下げない、という不退転の覚悟を示すことにもなろう。
 国際的に訴える際、強調したいのは、沖縄に対する日本政府の姿勢が非人道的という点だ。選挙という民主的仕組みを通じてなされた沖縄の意思表示をないがしろにしていること、すなわち沖縄に民主主義を適用しない実態を率直に伝えれば、どちらに正義があるかは一目瞭然であろう。
 沖縄の戦後史も伝えたい。沖縄の自治を「神話」と一笑に付し、代表を選ぶ選挙すら退けたキャラウェイ高等弁務官のような米国の差別的な植民地統治も、本国ではほとんど知られていないはずだ。
 この機会にその点も訴えれば、沖縄の基地反対が、歴史に由来する、分厚い民意に基づく不退転の要求であることが分かるだろう。