<南風>草取りミーティング

 先日、大学時代の恩師に、卒業制作展準備中のある学生を紹介してもらった。彼の作品は、グリューガン(樹脂を熱で溶かして接着させる道具)から出る溶剤が固まってできた小さなオブジェで、透明な樹脂感が綺麗(きれい)である。彼の作品制作の動機は、シャワー時にボーッとすると体感では3分ぐらいのことが、実は数10分ぐらい経(た)っていたという経験が元になっている。

 それを再現するために、蛇口からポトポト落ちる水滴のリズムに合わせてグリューガンで溶剤を絞り出していくという単純作業を行い、その過程で無意識の世界に触れたり、忘れていた記憶がよみがえったりという経験をしていた。この作品の話を聞いて、畑でのある出来事を思い出した。
 私の畑では、不定期で畑仕事を手伝ってくれる人たちがいる。畑は無農薬栽培だから、草取りを手伝ってもらうことが多い。野菜を避けながら草を引く。鼻腔(びくう)に当たる土と草の匂い、ひんやりと残る土の感触。草の緑と高く広がる空の青に目をやる。五感を程よく刺激させ、時間の感覚も忘れて草取りと会話がどんどん進む。
 「ウォーキングミーティングってこんな感じかな」「裸足になってアーシング(放電)しながらやったら、もっと気持ちいいかな」など、お手伝いに来てくれていた人と草取りミーティングの話で盛り上がった。養老孟司氏が、現代の参勤交代として数カ月里山や農村で野良仕事に精を出すことをやったら良いと言っていたが、草取りミーティングならもっと身近だ。
 農家は草取りの労力が減り、受ける側は、五感を刺激されることで頭がリフレッシュし、草取りという単純作業の中に意図しない記憶、新たな発想が出てくる面白さがある。仕事で新しい発想を求めている方、うえのいだでの草取りミーティングはいかがでしょうか。
(玉城真、うえのいだ主宰、珊瑚舎スコーレ美術講師)



琉球新報