<南風>専門分化と推薦入試


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 前回も少し触れましたが、東大の大きな特徴として、入学者選抜が学部学科ごとではなく、文科一類から三類、理科一類から三類の、合わせて六科類という大きなまとまりで行われることが挙げられます。戦前の旧制高等学校も、文科甲類、理科丙類などの分類でしたので、その伝統を引き継いでいると言えます。

 入学後、どの学部に進学するかは、二年生の秋に決まります。入学時の科類と進学する学部の対応関係については、標準的なものがあります。たとえば、私が入学した理科二類ですと、主には農・薬・理・医などの生命科学系に進学しますが、私のように教育学部に進学することも可能であり、原則としてどの科類からどの学部に進むこともできるようになっています。
 このように遅れて専門分化することを、大学では英語で、レイト・スペシャリゼーションと呼んでいます。この方式だと、大学で実際に学ぶ中で自分の興味や適性を見つめ直すことができます。高校生の目からみた大学の専門分野と実際とは異なる部分もありますし、自分自身の興味も大学に入ってから変わることもありますので、進みたい道が複数ある場合や、細かくは決まっていない場合には、柔軟な良い仕組みと言えるでしょう。
 一方で東大では今年から、入学時に学部まで決まる推薦入試を導入しました。遅い専門分化を望む高校生もいれば、早くから特定の分野に強い関心をもっていて、その分野の研究を始めている高校生もいます。東大の推薦入試は、後者のタイプの高校生に門戸を開き、多様な優れた人材で大学全体がさらに活性化することを目指したものです。
 初年度の今年は、2月10日に77人の合格者が発表されました。その少数精鋭の中に沖縄からの合格者もいたことを知り、たいへん喜んでいるところです。
(南風原朝和、東京大学理事・副学長)