<南風>東大の創立と入学式


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 東大は今から139年前の1877(明治10)年4月12日に創立されました。神田錦町の学士会館の前に「東京大学発祥の地」という石碑があります。その地にあった東京開成学校と、前年に本郷に移転していた東京医学校を合併して、東京大学と改称するという文部省の通達が発せられた日が創立の日とされています。

 東京開成学校は法・理・文の3学部に改組され、東京医学校は医学部に改組されて、合わせて4学部でのスタートでした。1886(明治19)年には法・医・工・文・理の五つの分科大学をもつ帝国大学に改組され、さらに東京帝国大学と名称が変わった後、戦後、創立時と同じ東京大学という名称に戻っています。
 歴史を調べると、帝国大学・東京帝国大学の時代は秋入学だったようですが、現在は創立記念日の4月12日に入学式が行われています。今年の入学式も日本武道館で、午前が学部、午後は大学院と、いずれも盛大に執り行われました。学部の入学式では、昨年ノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章特別栄誉教授・宇宙線研究所長の祝辞があり、大歓声が湧きました。
 私が学生のときは、東大紛争の余波で入学式は開催されませんでした。さらには卒業式もなく、そのため総長のお顔も在学中一度も見ることがありませんでした。それだけに、学生のときとは立場が違いますが、入学式に参加できること、特に檀上から3千人あまりの俊英が一堂に会した姿を見ることができるのは、たいへんうれしいことです。
 上述のような大学の歴史について、学生の頃はほとんど関心をもっていませんでしたが、調べ始めると非常に奥が深いです。そうした長い歴史に思いを馳(は)せながら、その歴史を引き継いでいくことになる若々しい新入生たちを見渡し、ひとり新たな感慨に耽(ふけ)った入学式でした。
(南風原朝和、東京大学理事・副学長)