<南風>食いしん坊天文学


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 土曜の深夜1時過ぎ。私は星を見る代わりに、キッチンで紅芋チーズケーキを焼いていました。ハワイで紅芋はオキナワン・スイート・ポテトと呼ばれ、スーパーで簡単に入手できる身近な食材です。翌日の熊本地震のチャリティバザーのため、紅芋チーズケーキをせっせと焼いていました。

 ハワイに来て感動したのが、豊富なアジアの食材です。沖縄系移民が多いため、アンダギーや沖縄そばも簡単に手に入ります。大学院生時代は観測中、よくオオシロ豆腐さんのおから(卯(う)の花)を食べたものです。
 今年8月は私の住むヒロの街で、ハーリーが行われます。一昨年に続き、今年も漕(こ)ぐことになりそうです。9月にはホノルルでオキナワン・フェスティバルが開催されます。私は例年ボランティアとして参加していますが、フェスティバルでは足テビチやソーキそば、アンダギーといった食べ物の出店が立ち並び、さながら那覇祭りのようです。
 アンダギーの中にウィンナーが入った、アメリカンドッグ風の「アンダー・ドッグ」、アイスクリームと一緒に食べる「アンダギー・ア・ラ・モード」と、ハワイではアンダギーも驚きの進化を遂げています。
 お気づきかと思いますが、私は食いしん坊。作るのも食べるのも大好きなので、天文学者同士のパーティーで、宇宙にちなんだ食べ物を作ることがあります。数年前に宇宙論パラメータが更新された時には、宇宙の密度揺らぎの統計量(パワースペクトル)をケーキ上に描きました。宇宙の組成をプレーン味(普通の物質)とココア味(暗黒物質と暗黒エネルギー)のちんすこうで表現したことも。
 今月末に地球に最接近する火星は明るさ、赤さが段々と際立ってきています。紅芋チーズケーキの上に、火星やさそり座でも描こうかなぁ、と思うハワイの夜更けなのでした。
(嘉数悠子、国立天文台ハワイ観測所アウトリーチ・スペシャリスト)