<南風>お茶の間に届けたいこと


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 私はテレビっ子だ。子どもの頃からテレビが好きで好きでたまらなかった。テレビを見過ぎてはよく親に叱られた。テレビ局に勤めて良かったことはと聞かれると、迷いなく「テレビをいくら見ても誰にも怒られないこと」と答える。テレビは私を新しい世界に連れていってくれる扉-。視聴者の皆さんにとっても新たな世界を開く扉であってほしい、そう願い、これまで十数本のドキュメンタリーを制作してきた。

 取り上げたテーマは、医療過疎、基地・原発問題、沖縄戦、障害者運動とまとまりはない。共通しているのは、他者を想(おも)い社会を変えようと闘う人が主人公という点だ。日々のニュース報道を含め、世の中はマイナスの情報に溢(あふ)れているが、私たちテレビマンは、人の中に確かに存在しているプラスを伝えていくことも大切な仕事だと思っている。これからもお茶の間にプレゼントを贈るような気持ちで番組を作っていきたい。

 と、ここまで立派そうなことを書いたが、私はアナウンサーとしては落ちこぼれだ。とっさに言葉が出てこないし、面白いことも言えない。失敗談を挙げればきりがないが、新人の頃、生中継で、プロジェクトを成し遂げる家族を見守っていたおばあ様が涙した際、「熱いものが込み上げ目頭を押さえていらっしゃいます」と言うべき所を「目尻を熱くしていらっしゃいます」と言ってしまい、感動のシーンを台無しにしてしまったことがある。

 この仕事に向いていない…悩み、もがいた20代、そして仕事を楽しめるようになった30代を経て、年明け40歳になった。

 年を重ねるごとに気持ちが自由になってきている。それは、オバちゃんになったからだと思うのだが…。そんなオバちゃんの自由な話にこれから半年間、ごゆるりとお付き合いください。

(平良いずみ、沖縄テレビアナウンサー)